第4話 悪役魔導士、ちょっぴり興奮する
エリットが用意した案内人の少女が手綱を握る馬車に乗り、カタカタと揺れる。
「むむむ……。旦那様との愛の巣にうじ虫が付いてきたのじゃ」
「別に愛の巣というわけではないが……」
「妾は旦那様と二人きりの爛れた生活がしたかったのじゃ!! 毎日毎日旦那様に身体の隅々まで使い込まれて旦那様専用のメス魔神にされたかったのじゃー!!」
リオロがぷくーっと頬を膨らませて言う。
口にしている内容が内容じゃなかったらわがままを言ってる子供みたいで可愛いんだがな……。
俺はちらりと御者台に座る少女に視線を向ける。
元は綺麗だったであろう金色の長い髪を雑に束ねており、死んだ魚のような虚ろな目で手綱を握っている。
あと巨乳だ。
年齢は十六、七歳といったところか。女性的な身体付きをしていた。
「……まったく、エリットめ。本当に趣味が悪い」
この金髪の少女はエリットに人生を壊されてしまったらしい。
何でもこの少女の恋人だった男が、正義感からエリットの運営する闇オークションを妨害したそうだ。
これに激怒したエリットは男とその恋人である少女を拉致。
少女が従順になるまで男の前で犯した後、男を殺させたらしい。
少女は心を壊してしまい、エリットの命令だけを聞く廃人になってしまったとのこと。
それをエリットは悪びれもせず……。
『あ、その子はもう飽きちゃったから君にプレゼントするね。捨てようとすると土下座で泣きながら命乞いしてくるから面白いよ』
と無理やり押し付けられてしまった。
エリットにとっては案内人と称してゴミを押し付けたつもりなのだろう。
こちらからしたら堪ったものではない。
「……テトラ様。目的地に到着致しました」
「む、そうか」
馬車から降りると、目の前にはそこそこ大きな屋敷があった。
辺りを見回すと鬱蒼とした森に囲まれており、間違っても人が来る心配は無さそうだ。
ふむ、人目につかない場所ならどこでも良かったから適当に選んだが、意外と良さそうな物件だったな。
「私はこのままテトラ様の所有物となるよう、エリット様から仰せつかっております。何なりとご命令ください」
「む。あー、そのことだが、別に必要ない」
「……え……?」
「金をやるから、どこか別の場所で暮らせ。お前は自由だ」
今まで辛かったろうが、俺はエリットほどの鬼畜ではない。
彼女には自由を与えようと思った。
しかし、どうにも少女は俺の意図とはまったく異なる受け取り方をしてしまったらしい。
「お、お待ちを、いや、待って、待ってください!! 捨てないでください!!」
「ふぁ? いや、捨てるって……」
「お願いします!! 捨てないでください!! 何でもします!! 掃除でも洗濯でも、お料理でも!! あ、つ、使ってください!! 身体だけは使い心地を保証できますから!!」
「ま、待て待て、落ち着け」
「お願いします……お願いします……捨てないでください……私を一人にしないでください……」
そう言って額を地面に擦り付ける少女。土下座である。
そして、それまで死んだ魚のようだった目からポロポロと涙が零れていた。
エリットの奴、何をどうしたらこうなる……。
「の、のう、旦那様よ。妾、この小娘が可哀想になってきたのじゃ。家に置いてやらんか?」
とても魔神の言う台詞には聞こえないが、俺もリオロと同じ意見だった。
ここで彼女を無理に自由にしたら自害してしまいそうですらある。
仕方ない。
「わ、分かった。なら、家のことをやってもらおう。掃除と洗濯、料理だったな。頼むぞ」
「あっ……は、はいっ!! ありがとうございます!! ありがとうございます!! 私のような生きる価値のないゴミに役割を与えてくださりありがとうございます!!」
そう言って再び額を地面に擦り付ける少女。
そのあまりにも卑屈な態度は、普通ならドン引きしてしまうものなのだろう。
しかし、ああ、正直に言おう。
少女はリオロが使っていただけはあって、絶世の美貌を有している。
スタイルも抜群でエロい。
そんな美少女が泣きながら感謝して土下座する様は、ちょっぴり興奮してしまった。
俺はエリットほどの屑ではないと思っているが、同じ穴のむじなかも知れない。
「……おい」
「は、はい!! なんでしょうか?」
「さっき、身体も使ってくれって言ってたな。抱かせろ」
「は、はい!!」
少女はその場で服を脱ぎ、俺に近づいてきた。
「ちょーっと待つのじゃあっ!!」
「……なんだ、リオロ?」
「なんだではない!! 妾も小娘を家に置くことに賛同はしたが、浮気は許しておらんのじゃ!! 妾というものがありながら!! 旦那様の浮気者なのじゃー!!」
「そ、そう言われてもな……」
俺はちらっと二人の胸を見比べる。
別にりオロの身体に不満があるわけではなく、単純に今は巨乳を楽しみたい気分なのだ。
と、そこで俺の視線に気付いたリオロが騒ぐ。
「お、おっぱいなのじゃな!!」
「ん?」
「くっ、旦那様は大きい方が好みじゃったのか!! こっちの身体の方がお菓子とか貰えるから妾好みなのじゃが……。旦那様のためなら致し方なし!! ――変・身ッ!! なのじゃ!!」
「うお!?」
リオロを濃いピンク色の魔力が包み込み、眩しく光り輝いた。
あまりにも眩しくて思わず目を覆う。
「ふふん、これなら旦那様も不満はなかろう?」
「……それは、どういう魔法だ?」
「これは妾の本来の姿!! まあ、不完全な復活故、一日に数時間が限度じゃがな」
リオロはボンキュッボンの美女になっていた。
身長も俺より頭一つ高いくらいになっており、おっぱいは俺の頭より一回り大きい。
爆乳だ。
少女のおっぱいとリオロのおっぱい、どちらも選び難い。
「ほれほれ、妾とあっちの小娘。どっちが良いのじゃ?」
「……」
「んん? よく聞こえんのう? もっと大きな声で言うのじゃ!!」
「両方だ」
「ほえ?」
絶対に自分が選ばれると確信していたのか、リオロは目をギョッとさせた。
本当は今日中に生活魔法の改良を始めようと思っていたのだが……。
ま、明日からでも良いか。
こうして俺の魔法を極めるために研究に明け暮れる日々が始まるのであった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「美少女の可哀想な姿は興奮する」
テ「……だな」
「可哀想は可愛いからね、仕方ないね」「スタイル可変式魔神で草」「お巡りさんこいつらです」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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