写真
Rotten flower
第1話
「
私のお父さんは写真家でした。
当時、とても高価だったカメラを買ってはお母さんに怒られて、それでも家族を笑顔にしてくれるお父さんが大好きでした。
お父さんが撮って今でも保管している写真はもう何枚かしか残っていません。お見せしましょうか?
」
写真を一枚取り出す。どこかの山での写真だ。
「
これは■■県の■■■山の七合目で取られた写真です。父はこの友人と二人で山に登ってきたらしいです。床に転がっている酒の空瓶も状況をより鮮明に描写してくれています。
こっちは私の元実家の近所の海で撮られた写真です。ちょっと海が汚くなっちゃってますが、やり方がやり方なので仕方ないですよね。確かこの時ぐらいから私も同じような写真を取りたいって思ったんです。
」
私は彼女の部屋へカメラを向けた。
非常に生活感のない部屋だ。カーペットも引かず、部屋にあるのはベッドと窓だけだ。
「
あまり映さないでくれますか。事前に伝えておいたと思うんですが、私の父の写真を撮るだけって言ってませんでしたっけ。
」
私は「言われてませんよ。」と言葉を返すと彼女の部屋の細部を映し始めた。何かを言われている気がするが私の耳には入らない。大丈夫だ。後はこれを持ち帰るだけ。
鈍い音がした。私は床に倒れる。力が抜けていって床が赤く染まっていく。彼女の父親のことを思い出し、理解した。
「
どうしよう。ブルーシート引き忘れたし、処理する用の道具は切らしてる。
あ、その前に写真を撮らなきゃ。
」
私が遠のく前最期に聞こえた声。その後にカシャっというシャッターが切られた音が聞こえたぐらいで私は静寂に包まれた。
写真 Rotten flower @Rotten_flower
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