エピローグ
英雄じゃない、救世主じゃない、ただの人間だ
宙に浮く仏像による厄災はもう起きない。そのニュースは世界中で話題となった。
誰もが厄災がもう起きない理由を知りたがっていた。
だが、それは隠された。
なぜなら、宗次がその理由を隠してほしいと言ったからだ。
宙に浮き厄災をもたらす仏像すなわち覚醒者と行曹を倒した宗次はその功績を讃えられた。
その場にいた皆が平和を取り戻したことで宗次に崇拝の眼差しを向けていた。だが、宗次はその眼差しが嬉しくなかった。
なぜなら……。
政府は宗次が世界を救ったことを発表しようとした。宗次はその話を聞いた時、すぐさま拒否した。
「なぜだ? 君は英雄だぞ」
「僕は英雄じゃありません」
「だけど」
「僕は英雄になりたかったわけじゃない。母の仇をとりたかっただけ……」
肝心な母の命を奪った仏像、覚醒者を倒すことは叶わなかった。
だが、一つだけ願いは叶った。
仏像、覚醒者のいない平和な世界を見る。これだけは何としても叶えたい願いだった。
「それに、僕は英雄でも救世主でも神でもない、ただの人です……だから僕の存在は隠してください。何としても、隠してください」
宗次は知っている。人の魂に激しい想いや信仰が注がれると、それは神や仏になる。
宗次は神にも仏にもなりたくなかった。宗次は宗教の次に来る存在になど、なりたくなかった。
「では、私達から……」
ずっとそばに控えていた6人の僧侶が一斉に立ち上がる。
「宗次君、君には感謝してもしきれない。だから君に一生困らないくらいの援助をさせてもらう」
「……」
「それと、何かお願いはありますか?」
「……一つだけ」
宗次は願いを言う。それを聞いた6人の僧侶は驚いた顔をして言った。
「そんなことで良いのですか?」
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