第4話 暗闇の中に
気づけば宗次はその場に尻餅をついていた。見上げると、地面に亀裂が入っているのが見えた。数秒後に宗次がその亀裂の隙間に落ちたと気づいた時には亀裂が徐々に閉じていた。
そして真っ暗になる。
宗次は地に左手をぺたりとつけ、青い炎を出す。灯りの代りとともにその空間ごと燃やせば出られるのではないか、と思ったからだ。だが、煙が充満して宗次はその場で激しくむせた。同時に、左腕に強い電流が流れたような激痛が走る。
無理だよ、お前はここから出られない
聞き覚えのない声が宙から聞こえた。宗次はあたりを見渡すが、暗闇が広がるだけで何も見えない。
「誰だ? お前は?」
「我は行曹……」
「行曹……え?」
「何で我がここにいるのか、と尋ねたいか?」
その直後、行曹の高笑いが真っ暗闇の空間に響いた。
高笑いが止み、行曹は言う。
「お前らが必死に我を探している間、我が体を清めて待っていたと思うか?」
「……どういう」
「お前らが必死に探している間、我はこの覚醒者の魂と癒着した」
「!」
「つまり、この覚醒者は我でもある」
宗次はますますこの空間から出ようと必死になった。
「何度も言わせるな、お前は出られない」
「なんでそんなこと!」
「なんで、か……」
行曹は淡々と語り始める。
「お前の中にいる方相荒哉が証明した。魂に激しい恐怖と憎悪が集まった時、それは神になる。今、我の魂に集まるのは仏像つまり我に対する激しい恐怖と憎悪……分からないか? 我はそれらを集めて
「ふざけんな!」
とてもくだらない。こんな、くだらないことのために宗次の母含めてたくさんの人が死んだのかと思うと、腸が煮えくり返る。
それでも何とか激しい怒りを押さえていられるのは行曹を倒したい、その一心だった。
そのためには冷静にならなければいけない。
「まあいい。あと数秒で京は滅ぶ。そしてお前は極楽浄土に行けず、一人その場に残される」
宗次は歯ぎしりをする。
左腕にはずっと激痛が走っている。もはや動かすこともできない。
このままでは、行曹の計画通りに京が滅び、宗次は厄災で焼き尽くされた京の地に立つ。そして厄災で京を滅ぼした行曹は勝ち逃げして消える。
なすすべなく行曹のすることを宗次は眺めるのか。あまりの悔しさで宗次の両目から涙が溢れた。
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