第4話 鬼神誕生(荒哉の過去Ⅱ)
―――――人の魂に、たくさんの憎しみや悪意が集まり、それが暴走した時、
―――――それは〈鬼神〉になる
小さな集落は大騒動だった。
僧侶――行曹は自分が作った薬師如来とその眷属である十二神将の圧倒的な力を、陰で眺めていた。
行曹は集落の人々が極楽浄土に行く姿を眺めながら微笑む。
極楽浄土に行くにはこれしか方法がないのだ。苦しいのは一瞬だが、後は極楽浄土に行くので苦しくない。
この集落をきっかけに、仏像が圧倒的な力を振るえば、京の全ての民は極楽浄土に行ける。そしてこのまま朝鮮や唐に進む。
行曹は満悦した表情で頷いていると、突然、十二神将の1つの頭が行曹の足元に飛んできた。
何が起きた?
行曹は足元に転がった頭に釘付けになる。
その時、行曹は血まみれの少年が青き炎をまとわせて宙で仏像と戦っている姿を見た。
少年は全身から血を滴らせながら青い炎で仏像を焼き尽くす。青きその炎は一気に仏像だけではなく、その周辺一帯を焼き尽くした。
「青き、火の鬼……」
行曹が思わずそうつぶやいた時、少年が行曹の方へ顔を向けた。
少年と行曹、お互いの目が合う。少年は行曹に向かって飛んでくる。
少年が飛ぶ周辺が青い炎で燃え尽くされる。このままでは行曹も同じように燃え尽くされる、そう思った。
だが、行曹が燃えることはなかった。
少年が力尽きて行曹の前で倒れたのだ。
少年はピクリとも動かない。行曹はこの少年に見覚えがあった。
金髪金眼のその少年は確か、集落の人々から忌み嫌われていた。確かこう呼ばれていた。
「
その瞬間、少年――荒哉の肉体から渦巻いた青き炎が出現した。
「まだ力が!」
青き炎の渦が行曹に向かってくる。
「蘇るな、鬼神!」
行曹は合掌して般若経を唱える。
青き炎の渦の中心が近づいてくる。
渦が近づいていくにつれ、行曹は声を聞いた。
助けて……助けて
行曹は鬼神のそんな戯言を聞き流して叫んだ。
「助けてやるものか!」
行曹は渦の中心に飛び込む。じりじりと体を焼かれながら行曹は必死の思いで渦の中心に会った白く光るもの――荒哉の魂を掴んだ。
「鬼神、無間地獄に堕ちるが良い」
行曹は荒哉の魂を地面に押し込み、力づくで封印した。
その場所が、現在の羅生門跡地である。
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