第5話 青鬼の意味


 約1000年近く、荒哉は憎しみと悲しみを魂に抱えながらあの羅生門跡地に封印されていた。

 荒哉はその間、自分を殺した人間に嫌悪感を抱いていたが、それ以上に、荒哉は自分を殺すきっかけを作った行曹、そして行曹が作った仏像である覚醒者を激しく憎んだ。

 だが、封印されこの地に縛り付けられてしまった以上、荒哉は自由に動けない。また、荒哉自身の魂は一連の出来事でかなり弱ってしまった。

 それゆえ、荒哉の魂だけでは仏像、覚醒者の魂を焼く程の青い炎の力を使うことができない。精々、小さな青い炎の玉を出現させるくらいだ。

 だから荒哉は誰かの肉体と同化する必要があった。

 宗次が荒哉の封印を解いた時、荒哉の魂は宗次の肉体に同居している状態だった。だから本来の魂の姿を仏像、覚醒者の世界である〈真相世界〉でとることができた。

 だが、宗次が荒哉に左腕をくれた瞬間、荒哉は宗次の肉体としての左腕だけではなく、宿。つまり、荒哉は宗次の肉体だけではなく一部の魂と同化している。それゆえ、荒哉は本来の姿を〈真相世界〉でとることはできなくなったが、その代わり、荒哉は――左腕だけであるが――自らの力を〈真相世界〉でも現実世界でも最大限に振えるようになった。



 突如なだれ込んできた荒哉の過去の記憶に宗次は絶句していた。同時に、宗次は小学4年生の時に母に節分の鬼のことを尋ねたことを思い出した。


『お母さん、赤鬼と青鬼の違いって何?』 

『宗次。赤鬼は欲望、欲しがる想いを意味していてね、豆をぶつけて自分の悪心を取り除くのよ』

『へえ、それじゃ、青鬼は?』

『青鬼はね……』


 瞋恚しんに――悪意・憎しみ・怒り――の象徴。

 

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