第2話 前触れ
自分の肉体を離れて眺めている宗次は簡単に今の状況を分析する。
(つまり、今向き合っているのは僕の体を借りた荒哉と、咲守さんの体を借りた……)
全ての黒幕、宗次が復讐すべき相手、行曹。
宗次は今すぐ母親の仇を取りたいという衝動に駆られた。だが、肉体を荒哉に貸している以上、それは叶わない。
行曹は言う。
「よく、我がいることに気づいたな」
「その肉体の右人差し指に最近できたばかりの小さな傷を見た。その時、お前が咲守の指先の血を辿って、肉体を乗っ取ったと、仮定した」
あの時、宗次は両腕の状態に気を取られていて指先にまで目がいかなかった。
(そういえば……)
荒哉や6人の僧侶たちの言葉を思い出す。
行曹も宗次や荒哉が使ったのと同じ手段――宗次は荒哉が封印された土地の地面にキスをした――で自らの封印を解き、肉体を手に入れて現世に復活した。
宗次は閃く。
もしかしたら、宗次の体液――唾を媒介して荒哉は宗次の肉体と同化したのではないだろうか。それと同じ手段とするならば、行曹は咲守の血を媒介にしてその肉体を手に入れた、ということになる。
現に、行曹は咲守の肉体を手に入れてここに現われている。
「人類皆を極楽浄土に送りたいお前がこんな荒地に仏像を置いたこと自体、変だと思った……ま、かつてお前を倒しかけた好敵手を先に倒しておきたかったと考えれば、辻褄が合うかのう」
荒哉、分かりやすく言ってくれ。
その宗次の言葉は荒哉には届かない。
「そうだろう、行曹」
「その通りだよ。我の崇高な目的を達成するためには貴様が邪魔だ、鬼神、否……」
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