第6話 荒寺の仏像、覚醒者Ⅱ
突如なだれ込んできた咲守の記憶に宗次は戸惑いを隠せなかった。
「これが、一人の強すぎる想い……」
宗次の戸惑いを傍に魂の傍に座っていた男性は魂に縋り続けている。
助けて……助けて……
宗次が歯を食いしばって走り出そうとした時だった。荒哉が言う。
「時間だ、358秒経った。一旦戻るぞ」
宗次はパチッと目を覚ます。そしてすぐさま立ち上がり、外に出た。
「!」
あの仏像は屋根の上から離れた所に浮いて、周辺に雷を落としていた。
地面から、空から雷が降り注いでいる。
宗次は左腕を宙に掲げる。すると、青い炎が宗次の左腕から放たれた。
青い炎が仏像に届き、仏像がぱちぱちと燃える。
だが、雷が止まらない。今は奇跡的に雷に当たってはいないものの、いつあたってもおかしくない状態だ。
「荒哉、火力上げられない?」
「全力だがここは遠い。近づけばよい話だが、近づけられるか?」
否、無理だ。辺りは地面を切り裂く程の雷がずっと轟いている。
「近づけばいいんだな……」
宗次は走り出す。荒哉の止める声が聞こえた気がしたが、宗次は進み続けた。
宗次は先ほどの男性が魂に縋りつく声を思い出す。
ただならぬ強い想いに宗次は言わずにはいられなかった。
「咲守さん! あなたは本当に極楽浄土があるって思っているの?」
仏像は雷を乱射し続けている。
「極楽浄土なんてありゃしない! 極楽浄土に連れて行くために大切なものを奪ったその先に極楽浄土なんてない!」
雷が一瞬だけ止む。宗次はこのチャンスを逃さなかった。
宗次は仏像と一気に距離を詰め、建物の中にもう一度入る。仏像、覚醒者真下こそ、一番近いからだ。
宗次は左腕を突き出す。
「荒哉、この距離なら」
「行ける」
宗次は上に向けて青い炎を放った。
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