第3話 荒寺の仏像、覚醒者
朝一番に宗次は案内に従って部屋を出て屋上に向かう。
すでに屋上にはヘリコプターが待機しており、運転手が宗次を手招きした。
宗次は招かれている方向へ歩いて向かう。
運転手から指示を受けながらヘリコプターに乗り込み、席に座った。
ドアが閉まると、羽が回る音が響く。
「出発します」
ヘリが飛び立った。
京都府以外の高速道路や一般道路が使えない。
あの僧侶の言う通りだった。ヘリコプターの窓から宗次は荒廃した光景を目にした。
道路はひび割れて盛り上がり、家屋は亀裂に沈んで原型を失った。あたりは砂嵐が舞い上がって何もない。以前宗次が滋賀県に行った時とは全く違う、かつて栄えていた様子はもうなかった。
テレビでは各地のこういった荒廃した光景は何度も見てきたはずの光景だが、実際に見ると実感して息をのむ。
宗次が住んでいる京都府の隣の県だというのに。
「
「?」
運転手が突然発した言葉に聞き覚えがあった。
確か、比叡山と言えば密教である天台宗の総本山延暦寺がある所だ。
「比叡山があった場所に仏像があると聞きました。その山の中腹にあなたを降ろします。その後このヘリは京都に戻ります」
「……」
そう言って運転手はヘリを着陸させた。
「え?」
宗次は一瞬場所を間違えているかと思った。
宗次はヘリから降り立ち、辺りを見渡した。
比叡山と、山という文字がついているのに山の面影が全くない。
木が一本もなく、砂埃を立てて荒廃している。
ただ、近くに今にも崩れそうな建物があるだけだ。
宗次は空を見上げて仏像を探す。今、空には何も浮いていない。
仏像らしきものは外にはない。
宗次は顎を引いて歩き出す。目指すはあの崩れそうな建物だ。仏像、覚醒者が外に出ていないとするならば、建物の中にいると考えるのが自然だ。
砂埃が舞い上がる度に屋根が崩れている。
宗次は慎重に建物の中に入った。放置されてずいぶん経つのだろう。建物の中は砂が入り込み、歩くたびに床が落ちそうだった。
歩いていくと正面に閉じられた扉が三つ横並びになっていた。宗次は導かれるように正面の扉に手をかけた時だった。
宗次から見て右の扉が開く。そしてずるりと仏像が歩いて出て来た。
パンチパーマのような螺髪に衣を一枚まとった仏像だが、その仏像は装飾品の彫刻が施されている。
仏像、覚醒者に復讐を誓ってから、宗次は仏像について調べ尽くしたから分かる。
あれこそ、
荒哉が言う。
「宗次よ、今すぐあれの額に触れよ」
飛ぶぞ
その直後、大日如来は屋根を突き破って宙へ飛んだ。
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