2章 全てを救わんと
第1話 現れた因縁の……
空中に現われたばかりの千手観音は何もしない。
だが、あと約4分後、秒にすれば約240秒後に、千手観音はこの地一帯を厄災へ陥れる。
時間がない、早く仏像を何とかしなければいけない。
仏像が見えた直後、僧侶は合掌しぶつぶつと唱え始めた。それからというものの、ずっと何かを唱えている。
「一体何をして?」
宗次の質問に僧侶は答えず、額に汗を浮かべながら唱え続ける。
「―――――魂抜きさ」
答えたのは宗次の中にいる鬼神の荒哉だった。宗次の声を借りて荒哉は続ける。
「文字通り、仏像の魂を抜くこと。そうすることで仏像はただの木に戻る。だが」
大量の汗を額に浮かべて必死に何かを唱えている僧侶に向かって荒哉は冷たく言う。
「行曹が作った仏像は仏教の範疇を越えてしまった。殺生という禁忌を犯したからのう。もはやあれ……覚醒者は菩提寺がするような読経では倒せない」
「じゃあ、どうすれば?」
「言ったはずだ。儂の炎は仏像すなわち覚醒者を滅ぼせると。儂はお前にその力を貸すと」
残り210秒。
「あれを倒すには仏像の魂を浄化すればいい。行曹の仏像の魂は〈
「時間がない。今すぐ行く」
「では暫時、儂に身をまかせよ」
次の瞬間、宗次は宙に浮いていた。そして自分の意思とは関係なく、仏像の頭にそっと触れていた。
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