第6話 再来
宗次は恐る恐る振り返る。
振り返ったその正面には緋色をはじめとした鮮やかな服装の僧侶がいた。
僧侶は宗次をまっすぐ見つめて言う。
「まだいましたか?」
「まだって?」
「この区は今立ち入り禁止です。早く逃げなさい。ここには仏像がある」
「それって、行曹の?」
うっかり口走った宗次のその言葉に僧侶が目を見開いた。
「なぜ……この情報はまだ世間には公表していな」
僧侶は中途半端なところで言葉を止めた。そして僧侶は宗次を、否、空を睨め上げた。
宗次は険しい形相で睨みつけている僧侶の視線の先を追う。
振り返ったその先の空中に仏像が浮いていた。
宗次はその仏像をよく知っていた。
母が亡くなった後、宗次はその仏像のことを一日たりとも忘れたことなかった。否、忘れまいと細部まで記憶に焼き付く程ずっとその仏像を睨みつけていた。
宗次から母を奪ったその仏像は、その形状の特徴から俗にこう呼ばわれていた。
「千手観音……」
あの時、名古屋一帯を厄災で覆った仏像……否、覚醒者……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます