第6話 再来

 宗次は恐る恐る振り返る。

 振り返ったその正面には緋色をはじめとした鮮やかな服装の僧侶がいた。

 僧侶は宗次をまっすぐ見つめて言う。


「まだいましたか?」

「まだって?」

「この区は今立ち入り禁止です。早く逃げなさい。ここにはがある」

「それって、行曹の?」


 うっかり口走った宗次のその言葉に僧侶が目を見開いた。


「なぜ……この情報は


 僧侶は中途半端なところで言葉を止めた。そして僧侶は宗次を、否、空を睨め上げた。

 宗次は険しい形相で睨みつけている僧侶の視線の先を追う。

 振り返ったその先の


 


 宗次はその仏像をよく知っていた。

 母が亡くなった後、宗次はその仏像のことを一日たりとも忘れたことなかった。否、忘れまいと細部まで記憶に焼き付く程ずっとその仏像を睨みつけていた。

 宗次から母を奪ったその仏像は、その形状の特徴から俗にこう呼ばわれていた。


 「……」


 あの時、名古屋一帯を厄災で覆った仏像……否、……。


 

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