第2話 二度目の厄災

   *


 2024年のある日。

 厄災は東京が火の海に包まれてから2週間後に名古屋で起きた。

 誰もが東京での出来事に釘付けになっていた頃、宙に浮く仏像が名古屋でも確認された。

 名古屋での時も仏像はしばらくその場に浮いていた。東京での出来事もあり、政府や自衛隊がすぐさまその仏像を壊そうと尽力した。だが、自衛隊がいくら攻撃しても仏像は壊れなかった。

 周辺の住民らはパニックに陥り、名古屋が混乱状態に陥った。避難するためにありとあらゆる交通網が麻痺した。

 その時、宗次の母は仕事で名古屋にいた。母も早く避難しようと新幹線に駆け込もうとしたが、あまりの混乱で母は新幹線に乗り遅れた。だがこの時点では皆、まだ24時間ある、とどこか安心した様子だった。なぜなら、東京では約35時間後に仏像が東京とその周辺を火の海にしたからだ。だから、そこにいた誰もが約35時間以内に名古屋から逃げればいいと思っていた。

 だが、名古屋で仏像が宙に出現してから358秒後のことだった。


 名古屋と周辺が一瞬にして消えた。


 スマホから流れた名古屋消滅のニュースを受けて、宗次は中学校で青ざめた。

 連絡を取ろうとしたが全くつながらず、災害ダイヤルでも母のメッセージはなかった。この時の宗次は祈るしかできなかった。

 だが事態は急転した。やっとテレビに名古屋の様子が映し出されたのだ。

 宙に浮いていた仏像は嘘みたいに消えていた。だが、地上の光景の悲惨さに宗次は息をのんだ。建物は全壊し、地面には大きな亀裂が入っていた。そして、その亀裂から次々と犠牲者が掘り起こされた。

 そして宗次は、その犠牲者の中に母がいたことを知った。

 あまりのショックでその後のことはよく覚えていない。気づけば、宗次の目の前には骨壺があった。甚大な被害故に、犠牲者たちの火葬はその場で行われ、遺族のもとへは骨壺だけが届いた。

 宗次は骨壺を両手で握りしめたまま、固まった。

 どれくらい固まっていたか分からない。気づけば外はもう暗くなっており、その時の空を見上げると、憎たらしいほど満天の星が光っていた。

 宗次は骨壺を強く握りしめながら、この時仏像への復讐を誓った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る