第6話 加奈子と京子
次の日、加奈子はいろんな感情を抱きつつも京子の住むアパートに足を運ぶ。
(うぅぅ、どんな顔して会ったらいんだろ。でももう来ちゃったし…)
加奈子は来る途中で買ってきたケーキ屋さんの袋の持ち手をギュッと握りしめ、勇気を出して部屋のインターホンのボタンを押す。
すると間髪入れずに部屋のドアが開き京子が顔を覗かせた。
あまりにも早かったので加奈子は腰を抜かしそうになった。
「うわ!京子さん!?こんにちわ!」
「こんにちわ加奈ちゃん。今日は来てくれてありがとね。あがってあがって」
「は、はい…おじゃましま~す」
(びっくりしたぁ。もしかしてドアの前で待ってたのかな?)
京子の部屋には割と何度も来たことがあるはずなのに今日は何か違って見えてしまう、
廊下を通されリビングに着き、加奈子は持っていた袋を京子に手渡した。
「これお土産です。一緒におやつに食べましょう。京子さんの好きなプリンクレープも入ってますよ」
「ほんと?ありがとう加奈ちゃん。気を利かせちゃってごめんね。ふふふ♪」
京子はお土産を冷蔵庫に入れた。
割といつもの京子のように見えるが目の下に小さなクマができているのを加奈子は見逃さなかった。
(やっぱり…お互い寝れてないのかもね、今日のことで)
加奈子がうつ向いていると京子は下から覗き込んできた。
相変わらず距離が近いので加奈子はドキッとしてしまう。
「加奈ちゃん大丈夫?もしかして元気ない?」
「だ、大丈夫です!ちょっと昨日あんまり寝れなくって…」
「ごめんね。私のせいだよね…」
「それは…」
何かを言いよどんでいる加奈子に京子はゆっくりと口を開いた。
「コヨリのこと…やっぱり恥ずかしくってね。あんな恰好を加奈ちゃんに見られてるんだって思って、ちょっとお休みしてたんだけど」
「それは…ごめんなさい。私が余計なこと言ったから」
「うぅん、私の気持ちの問題。だからそんな気持ちを払拭させたくって今日加奈ちゃんに来てもらったの」
「え?それってどういう…」
加奈子が何かを言いかけようとしたとき、京子は大きく深呼吸をし、意を決したような表情でゆっくりと口を開いた。
「ふぅぅ…今日ね、加奈ちゃんの目の前でやりたいと思ってるの」
「なにをするんですか?」
「えっと…配信をしたいと思います。今ここで」
「え…え?配信を!?」
顔を真っ赤にしている京子を見て加奈子は全てを理解した。
なんと京子は今からコヨリとして動画配信をするつもりなのだ。
しかも加奈子の目の前で。
「今からやるんですか!?え?えぇ!?」
「そう、やっちゃう」
京子は加奈子に優しく微笑みかける。
でも目は真剣そのものだった。
唐突な発言に慌てふためく加奈子だったが京子の意志は揺るがない。
「私の一方的なわがままなんだけど、付き合ってもらってもいい?おねがいします、加奈ちゃん」
京子は加奈子に頭を下げた。
そんな京子の決意とは裏腹に加奈子は大興奮していた
(京様が生のコヨリちゃんに!?生配信!?しかも目の前で!?やったぁ!特等席だ!)
加奈子には拒否する理由が一つもなかった。
「見たい!凄く見たいです!嬉しい!こんな近くでコヨリちゃんの配信見れるなんて!」
「えっと…ありがとう。なんかこんなに喜んでもらえるとは思ってたなかったよ」
目の前の大はしゃぎしている加奈子を見て京子は手で首筋をさすり恥ずかしがっていた。
だが了承してもらえたことにホッと胸をなでおろした。
「時間までまだちょっとあるけど、もう準備していくね」
「はい!」
京子は配信の準備に取り掛かった。
「カメラに映っちゃうからこっちから先には来ちゃだめだよ?あと声も出さないようね?まだ配信してないから大丈夫だけど」
「はい!わかりました!」
言われるがままに加奈子は京子と少し距離を置き、座りながら配信を見守ることにした。
部屋の中央に今日着る予定の着ぐるみのパーツがどんどん集められていく。
衣装、肌タイツ、そして着ぐるみの顔であるプラスチック性のマスク…
クローゼットから衣装が持ち出されるたびに加奈子の脈はどんどん速くなっていった。
(うわ!本当にやっちゃうんだ!今日はあのマスクでやるんだ!やばい!興奮する!)
京子は冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し。加奈子に手渡した。
「これは?」
「配信の時に部屋の温度を上げてるの。喉乾いちゃうと思うから渡しておくね」
今日は気温がそこまで低くないにもかかわらず、京子はエアコンのリモコンを手に取り暖房をかけはじめる。
あっという間に室内が温まってきた。
(わざわざ温度上げてるんだ…だからいっつも汗まみれなの?もしかしてわざと汗染みを作ってる?うわっ京様!確信犯じゃん!)
コヨリの汗染みの秘密とそれをあえて作ろうとしている京子にさらに興奮する加奈子。
しかしこの後、加奈子はさらに京子の内面に触れていくことになる。
京子はパソコンの電源を付け、生配信の枠を設定した。
加奈子の携帯には早速通知が入り、視聴ページを開く。
本当に目の前で配信が始まることに興奮する加奈子に京子はさらなる追い打ちをかける。
「加奈ちゃん、今から音だけ先流しするね」
「先流し…ですか?」
「うん。だからもう喋っちゃだめだよ?じゃあマイク入れちゃうね」
京子はまだ着ぐるみに着かえてもないのに配信を始めてしまった。
しかしカメラは付いておらず、待機画面のままで京子の姿は映し出されていない。
そして京子は着ている服を脱ぎ始めた。
(配信始まっちゃってる!大丈夫なの京様!?)
配信開始予定時間にはまだ少し早い。
しかし京子は服を脱いでいく。
加奈子の手に持っている携帯からは布と布がこすれ合う音が聞こえてくる。
加奈子と同様に配信を待機して見ていた視聴者達もチャット欄で困惑している。
あっという間に京子は全裸になってしまった。
(いつも全部脱いでやってるんだ!もしカメラが入っちゃったらどうするの!?)
心配になり加奈子は京子に目を合わせる。
京子は顔を赤くしながらも目を細め、加奈子の方を見てニタっと不敵な笑みを向けた。
(うわ!うわっ!あんな顔するんだ!うぅぅゾクゾクしてきた!)
肩で大きく呼吸をしていて、よく見るとうっすらと汗をかいているようだ。
配信を、しかも加奈子の目の前でやっているということもあり、京子もいつも以上に興奮しているようだった。
京子は肌タイツを手に取り、足を通していく。
しかし汗をかいていることもあり着るのに手間取っている。
「ふっ…んっ…はぁ…はぁ…」
京子の気張っている声が漏れてしまっている。
加奈子は口に手を当てながら京子がこれ以上声を出さない様にとハラハラしていた。
(だめだよ京様!声漏れちゃってるよ!そんなに着にくいのかな?あのタイツ…)
加奈子は不思議に思い目を凝らして京子が着ようと奮闘している肌タイツを見てみる…肌タイツの内側の色が表面の色と違う。
(リバーシブルなの?でもそんなタイツあるのかな?)
携帯をカメラモードに切り替え、拡大して見てみる。
そしてあることに気づく。
肌タイツの内側にびっしりと起毛がついていることに。
(あれ防寒用タイツとかの裏地になってる起毛?裏起毛の全身タイツなの!?)
わざわざ室温をエアコンで高くした上に裏起毛の肌タイツまで着ている。わざと汗まみれになるように…
そんな分厚いタイツに顔以外を着こんでしまった京子。
顔は真っ赤になっていて額から大粒の汗を噴き出していた。
そして京子はベルトに卓球の玉くらいの何かがついている物を拾う。
加奈子はそれがなんだかまだわかっていない。
(なにあれ?チョーカー?でも変な形してるし…う~ん)
加奈子の不思議がっている顔を見たからなのか、京子はそれを指でつまんでプラプラと揺らしながら加奈子の顔色をうかがう。
そしてまたニタっと笑った後に口を大きく開け、ベルトについている玉を口に頬張ってしまった。
(えっ?えぇ!?なんで食べちゃってるの!?)
目をぱっちりと開けて驚愕している加奈子をよそに、京子は玉についたベルトを後頭部で結んでしまった。
そう、京子が付けたのは猿轡だ。
「んぐ…ふぅ…ふぅ…うぅぅ…」
閉じられない京子の口の端から涎がつぅ…と垂れ、肌タイツに吸収されていく。
加奈子は開いた口が塞がらなかった。
(あれってSMとかのやつ!?そんなのまで付けてるの!)
苦しそうに息をしているのに京子はなぜか満足したような顔で紅潮している。
いつもの優しく穏やかな京子とはまるで別人のような官能的な表情を見せられ、加奈子はいつもと違った興奮を覚えていた。
(うわぁ…京様ってあんな…あんなエッチなんだ…だからコヨリちゃんがあんなに…)
ゴクリと唾を飲みこむ加奈子。
息をするのも忘れるくらいにいつもは見れない京子に釘付けだった。
京子が衣装を着ていく。
ショーツ、黒いタイツ、短めの黒いスカート、ピンク色のキャミソール、ピンク色のカーディガンを。
(これって…あの時の服装!?)
そう、今着ている服は一緒に買い物で京子が試着したときの、加奈子が写真を撮りまくった服装と全く一緒なのだ。
京子はキャミソールをつまみながら猿轡を咥えていてもわかるくらいに口角を上げ、加奈子の方を見て笑って見せた。
あの時恥ずかしがって写真を撮られていた京子とは思えないほどに。
その表情を見て加奈子の背筋がゾクゾクっと震える。
(なんかすごい…京様なのに京様じゃなくって…でもエロ可愛いくって…かわいい…やばい…)
室温が上がっていることもあり、加奈子の体がどんどん熱くなってくる。
京子はいよいよマスクを手に取る。
マスクの頭頂部を支点に前後にパカっと開き、京子はゆっくりとマスクで頭を挟んでいく。
次にマスクの横についている耳の下の部分の金具でパチン!パチン!と固定した。
京子はついに全身を着ぐるみに包まれコヨリになってしまった。
(いつもはあんな恥ずかしがりな京様がなんか…結構挑発的で、ちゃんとコヨリちゃんで、でも中身は京様で…エロ可愛くって…うわ…うわっ…)
加奈子は京子からコヨリへの変身の一部始終を見ていたはずなのだが、いまだに脳が困惑しているようだ。
そんな心境を察してか、コヨリ(京子)はさらに加奈子を煽ってくる。
京子は床から鍵と小さな箱を拾い上げる。
鍵をチャリチャリ顔の前で揺らした後、マスクの横の金具の穴に差し込み、回す。
パチン!パチン!という音が響く。
その音を聞くたびに加奈子の心臓が大きく脈打つ。
(あれってもしかして…マスクに鍵かけたの?脱げない様に!?でもちゃんと開けられるよね?鍵なんだし)
加奈子が不安になっていると、コヨリはそのカギを一緒に拾い上げた小さな箱の中に入れて箱を閉じてしまう。
そして何かのボタンを押しピッピッと電子音を鳴らす。
ピッ…ピッ…ピッ…ピピ!カチィ…
不吉な金属音…コヨリは加奈子の方に鍵を入れた箱を見せる。
タイマーのような電子表示。
1:59:59、1:59:58、1:59:57と数字が減っていく。
どうやら二時間に設定しているようだ。
コヨリはその箱を開けようとする…開かない。
そしてコヨリは箱をパソコンのデスクの上に置いた。
加奈子は全てを察した。
(マスクに鍵かけて箱に入れて…でもその箱は開かなくってタイマーが付いてて…二時間も…二時間も京様はコヨリちゃんを脱ぐことができないんだ…)
加奈子はいつも配信を見ていてタイマーが配信画面に映っていることは知っていた。
それは配信時間を計っているのだと勘違いしていた。
しかし実際は異なる。
あのタイマーは京子を物理的にコヨリの中に拘束している時間だったのだ。
しかも自分からそんな制約を付けてしまっているなんて…
すべての配信の裏事情を知った加奈子の頭の中で、今までの配信画面が走馬灯のようによぎっていく。
コヨリとは汗染みやエッチな服装以上に刺激的な存在だったのだ。
しかもその中身はあの京子なのだ。
(はぁ…はぁ…やばい…どきどきが…収まらない…こんなにエッチだったなんて…京様…)
加奈子は京子に渡されていたペットボトルのお茶を口にした。
そんな中コヨリはカメラをオンにし、いよいよ本格的に配信を開始した。
▷こんにちわ!みなさんお久しぶりです。
▷あとごめんなさい!今度はマイクが入っちゃってたみたい…あいかわらずドジですね。本当に気を付けます。
コヨリがコメントを打ち込み、パソコンの前で視聴者に頭を下げたり、愛嬌を振りまいている。
チャット欄の視聴者達の優しいコメントが返ってくる。
しかしこれを間近で見ていた加奈子はそれが意図的で、視聴者を煽っていたことを知っている。
現に加奈子も京子の着替えの工程を見せつけられてかなり興奮させられてしまった。
(これは…確信犯だよ京様!いつも楽しんでたんだ…なんてあざとい!うぅぅ…)
コヨリは加奈子の方に顔を向けマスクに手をあててみせた。
加奈子がビクッとなるとサッとパソコンの方に顔を戻す。
加奈子は弄ばれていた。
(でたでた!小悪魔だよアレ!くぅ…遊ばれてる!でも可愛い…)
コヨリに遊ばれながらも加奈子は今の状況を楽しみまくっていた。
なんせ他の視聴者とは違い、目の前で配信を楽しんでいるのだから。
それから一時間後、いつものようにチャットを楽しんでいるコヨリと視聴者達。
そしていつものようにコヨリは首筋に大きな汗染みを作っていた。
「ふぅ…ふぅ…ふっ…うぅぅ…」
しかし加奈子は知っている。
その染みは汗だけではない。
コヨリのマスクの中で京子が猿轡を咥え、口が閉じられずに涎を垂らしていることを。
そしてその涎が口から顎、首筋まで垂れまくってしまっていることを。
加奈子にはその染みが部屋の照明に照らされて、艶っぽく光って見えてしまっていた。
(すごい…たれてる。いつもこんなに染みてたっけ?生で見てるから?やばい…エッチすぎる…)
興奮している加奈子とは対照的に、チャット欄のコメントのやりとりはとても平和だった。
今期のアニメの話や最近やろうとしているゲームの話、最近身近で起きた出来事などいたって普通の内容。
そしてチャット欄の会話がコヨリが最近買った服の話に話になった。
▷このキャミソールとスカートはお買い物のやつですね。この前の配信でもお披露目しましたね♪
▷カーディガンも先週のお買い物で買ったやつなんですよ?可愛いですか?
コヨリが椅子から立ち上がり、その場でくるっと回って見せた。
そしてカーディガンを脱ぎ、椅子に羽織る。
▷ちょっと暑くなっちゃったので脱ぎます。ふぅぅ…
コヨリが立ったままコメントを打ち込む。
その時にキャミソールからタイツで覆われた胸の部分がちらりと見えた。
汗でタイツの色が濃くなっていた。
(わっ…わぁ!びしょびしょだ…相当暑いんだろな…)
コヨリはパソコンの椅子を少しよけてその場で色んなポーズを取った。
胸を寄せるポーズやカメラに向けてお尻を突き出すポーズなど…どれも視聴者の欲情を煽ってくるようなポーズだ。
加奈子はそんなコヨリに大興奮だった。
(すごい煽ってくる!うぅぅ…写真撮りたい!でもシャッター音なっちゃうし配信画面と生の京様も見たいし…くぅぅ!でもでも…シャッター音が鳴らなきゃいいんだよね?画角に納めるだけでも…)
加奈子は携帯をカメラモードにし、コヨリに携帯のレンズを向けた。
するとパソコンの前で挑発的なポーズをとっていたコヨリが加奈子のカメラにビクッと反応した。
そしてその大きな胸とプリっとしたお尻を手で隠すようにもじもじとしだしたではないか。
その仕草に加奈子は試着室で恥ずかしがっていた京子の面影を見る。
(恥ずかし…がってる?あんなにノリノリだったのに?ふ~ん…ふふふ♪可愛い!やっぱり京様なんだ♪)
コヨリの内面からにじみ出てきた京子の側面にさっきまで遊ばれていた加奈子は得意げになる。
もっと悪戯したい衝動にかられ、露骨に携帯を構えた。
コヨリはさっきよりも恥ずかしがり、体を丸めて縮こまってしまう。
(ありゃりゃ、ちょっとやり過ぎちゃったかも。ごめんね京様。もうしません)
加奈子は携帯を下し両手を合わせてごめんなさいのポーズを取った。
するとコヨリが加奈子の方に近寄ってきたではないか。
(やばい!どうしよ!逃げ…ると音立てちゃうし!)
焦る加奈子に対してコヨリは腰をおろし、加奈子の頭をポンポンとした後、撫でてくれた。
(びっくりした…なんでナデナデしてくれるんだろ?ん…んん!?)
加奈子はコヨリの今の状態に驚愕する。
遠目だからわかり難かったが、間近でみるとコヨリの汗染みは凄いことになっていた。
首筋は汗と涎でべっとりになっている。
そしてさっきチラ見えした胸にまでそのベタベタが広がっている。
カーディガンを脱いだおかげで見えるようになった脇の下は汗染みがかなり顕著で、横腹にまで滴りそうだった。
「ふぅ…ふぅ…んぅ…」
コヨリから漏れ出る京子の息苦しそうな呼吸音、加奈子の好きな京子の汗の匂いと化繊の匂いが混じった独特な香り。
それに肩で息をしていて、タイトなスカートで包まれたお腹が激しく膨らんだり引っ込んだりしている。
苦しそうで汗臭い京子を前にして加奈子は心配するどころかさらに興奮してしまうのだった。
(うわ…すごい汗だ。くんくん…京様の匂い…やばい…しかもまだ一時間も残ってるよ?どうなっちゃうんだろ!?)
コヨリは加奈子から手を放し立ち上がる。
そして加奈子に小さく手を振った後、パソコンの前に立ちまた視聴者を煽るようなポーズを取る。
加奈子はというとポーズをとっているコヨリには目もくれず、コヨリが先ほどまで立っていた加奈子の足元に釘付けになっていた。
(湿ってる。足の形に…あとこれは…汗の後?)
床にコヨリの足跡が付いているのだ。
きっと裏起毛タイツ、そしてその上に黒タイツまで履いているため、蒸れ蒸れになった京子の足の裏からでる蒸気によるものだろう。
そしてその横には2、3適だが水滴がある。
さっきコヨリが加奈子の前でしゃがみ、立ち上がった時にマスクの顎の部分から垂れたものだ。
そうなるとこれは京子の汗、もしくは涎の可能性もある。
加奈子はゴクリと息を飲んだ。
(これ京様の…ふぅぅ…ちゃんと拭いとこう)
加奈子は何か良からぬ妄想をした後、我に返ってポケットからテッシュを取り出し、床に付着している京子の体液を拭き取った。
コヨリの動画配信から二時間近くたった。
マスクの鍵を入れた箱が開くまであと数分。
コヨリは椅子に座って視聴者とチャットを楽しんでいる。
しかし…
「ふぅ…ふぅぅ…んぐっ…ふぅぅ…」
少し距離をとっている加奈子にも十分に聞こえるほど京子は息苦しそうに呼吸している。
今や首筋や胸にとどまらず、キャミソールで隠れてはいるがお腹のあたりまで汗びっしょりになってしまっている。
きっと加奈子の前での配信ということもあり、中の京子はいつも以上に興奮し、緊張していたのをその汗染みが物語っていた。
そんな京子の内情を知らない加奈子は、肩で息しているコヨリを見てさらに興奮していた。
ピピピ!ピピピ!ピピピ!カチャッ!
そんな中、電子音ともに何かが開いた音がした。
マスクの鍵を入れている箱が開いたのだ。
「んぅ?…すぅぅぅ…ふぅぅぅぅ…」
コヨリもそれに気づき、大きく深呼吸した後、肩の力をフっと抜いた。
そしてコメントを打ち込む。
▷そろそろ配信を終わりにしたい思います。
▷みなさん京もきてくれとありがとうございました♪
かなり誤字が目立つ。
いつもは丁寧な対応をしているあのコヨリが、今日はお別れの挨拶も手短にすぐさまカメラとマイクを切り、配信も閉じてしまった。
加奈子もそれを不思議がっていた。
(今日はなんかそっけないな?配信切り忘れ詐欺のやつもやらないのかな?)
加奈子は持っている携帯で配信がちゃんと終わったことを確認する。
それに対してコヨリは真っ先にマスクの鍵を箱から取り出し、その場にぺたんと座り込んでしまう。
そしてマスクの金具の鍵穴に鍵を差し込もうとしている…慌てているせいで中々に鍵を開けられない。
そんな状況のコヨリとは対照的に、加奈子は携帯を眺めており、視聴者達の今日の配信の余韻に浸っているチャットコメントにのんびりと目を通していた。
「ふぁふぁひゃん…ふぁふぁひゃん!」
京子は猿轡に塞がれた口で何かをうったえている。
加奈子の耳に京子のくぐもった声が届く。
コヨリがブルブルと顔を横に振り、マスクの鍵が開けられないアピールをしている。
「え?開かないんですか!?ちょ、ちょっと待ってください!」
加奈子は慌ててコヨリの近くに駆け寄り、コヨリからマスクの鍵を受け取る。
そして鍵穴に鍵を差し込み、なんとか鍵を開け、マスクを前後にパカっと開いた。
マスクを取った時にマスクの口の部分から汗とも涎ともわからない液代がドロッと床に垂れ落ちた。
「ぷふぅ!ふぅ!ふぅ!ふぅ!うぅぅ…」
「うわ!?大丈夫ですか!京子さん!」
ゆでだこのように真っ赤になった京子が顔を覗かせる。
顔中、いや肌タイツも後頭部までびっちょりで、口の部分は涎まみれになってしまっていた。
床に両手をついてしまった京子のかわりに加奈子は猿轡のベルトを緩め、京子の口からゆっくりと猿轡を取り出した。
京子の口から大量の唾が床にべちゃっと流れ落ちる。
「がはっ!はぁ!はぁ!はぁ!ぐふっ…!はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「京子さん!京子さん!!」
加奈子は京子の両肩に手を置いてもまだ何も喋ってくれない京子の肩を心配そうにゆする。
加奈子の手にじわっと肌タイツから染み出た汗が付着する。
それが配信の過酷さを物語っていた。
京子は少し深呼吸をした後うつむいていた顔を上げ、加奈子にニコっと優しく微笑みかけた。
「はぁ…はぁ…配信…どうだった?…ふぅぅ…ふふふ♪」
「京…様…京様ぁ!」
加奈子は京子に抱き着き、泣きながら胸を顔を埋めた。
べちょべちょになっているにもかかわらず…
「加奈ちゃん!?どうしたの?」
「凄かったです!すごいエッチで…エッチで可愛かったです!汗染みもすごくって!匂いもして!でもこんなになるまで…京様ぁ…うぅぅ…」
そんな興奮しながら泣いている加奈子を京子は優しく抱きしめ、頭をなでなでする。
加奈子は京子の胸から顔を離し、顔を上げた。
京子はまた加奈子に優しく微笑みかける。
「ふぅぅ…ごめんね。心配かけちゃった。加奈ちゃんの前だから私もいつも以上に緊張して…でも京様はちょっと…ね?」
「…だめです!今日は…今日だけは京様です!ふふふ♪」
「うぅぅ…恥ずかしいよ」
加奈子はいつの間にか泣き止んでおり、ニコニコしながら理由もなくまた京子の豊満な胸に顔を埋めた。
京子も観念し、しばらく加奈子を優しく抱きしめた。
京子は加奈子に手伝ってもらいながら衣装を脱いでいく。
キャミソール、スカート、黒タイツ…衣装を脱がすにつれて加奈子はどんどん興奮してしまう。
そう、汗が尋常ではないのだ。
頭はもちろん、肩やわきの下、おへそあたりまでびっしょりになっている。
下半身は肌タイツの上に黒タイツを着ていたこともあって、汗染みがない部分を探す方が難しい。
そして加奈子は京子の後ろに立ち、いよいよ肌タイツのチャックのつまみに手をかける。
頭頂部から腰までゆっくりとジッパーを下していく…
タイツの割れ目から紅潮し、汗まみれの京子の肌が垣間見え、まるで蒸気のように京子の匂いがあふれ出す。
(すごいいい匂い…京様の…まだチャック開けただけなのに、脱がすとどうなっちゃうんだろ)
「…脱がせていきますね?ちょっと失礼します」
「うん、お願い」
加奈子は腕をまくり、意を決して割れ目に手を入れて肌タイツから京子を引きはがす。
まずは頭から…いつもはボリュームのあるふわふわした京子の髪が汗でべっちょりと濡れて頭に張り付いている。
顔からタイツを引きはがしたとき、京子の顎とタイツが糸を引いて繋がっていた。これは京子の涎だ。
加奈子はゴクリと息を飲みこんだ。
続いて腕、胸、腰と京子からタイツをゆっくりと脱がせていく。
先ほどとは比べ物にならないくらい京子の匂いが部屋に広がっていく。
艶めかしい汗まみれの肌、蒸れた匂いに加奈子はあてられてしまうのだった。
(やばい…くらくらしちゃうよ。こんなにエッチな体見せられて…)
興奮が収まらない加奈子の手が腰まできたとき、京子が加奈子の手を優しく掴んだ。
手を放してくれない京子の顔を加奈子が不思議そうに覗きこむ。
京子は唇をきゅっとつぐみ、うつむいている。
「京様?あの…手を…」
「…うん。ちょっと待って?ふぅぅぅ…」
京子は大きく息を吐いた後、加奈子に顔を向ける。
「たぶん加奈ちゃんでも…これ見たら引くと思う。じゃあ…下すね」
京子は自分で腰まで下りている肌タイツを手にかけ、太ももまでズルっとタイツを脱いだ。
京子の恥部とタイツが糸を引いて繋がっている。
恥部が触れていたタイツの内側の部分は汗とは違う、ぬらぬらとした淫らな体液がべっとりと付着している。
(え…え?これって…!)
そうの愛液だ。
京子が感じていたという事実を目の当たりにし、顔を真っ赤にして困惑する加奈子。
そんな加奈子を見て京子はプルプルと唇を震わせながらゆっくりと重い口を開く。
「わたしね、すごい嫌な女なの。わざとエッチで汗まみれな恰好を見せてみんなを煽ったり、配信切り忘れたふりして音だけ流したり…」
「あ…あの…」
「でもね、こんな汚くて淫ら姿を見られてね、興奮してる自分がいる。ほら、こんなにぐちょぐちょになってるでしょ?さすがにドン引きだよね、こんなことして感じちゃうなんて…」
京子は加奈子から目をそらし、悲しげな顔をする。
きっと完全に加奈子に軽蔑されたと思っているだろう。
「そんなことないです!!」
「え!?」
急に大きな声を出され、京子はフっと加奈子の顔を見る。
加奈子は顔を真っ赤にしながら口をわなわなさせている。
「すごい可愛いです!今の京様!可愛いし…エッチだし!なんかいつもと違う京様が見れてすごく興奮しました!もっと…前よりずっと京様の事…大好きになりました!ふふふ♪」
相変わらず語彙が少ないが加奈子は自信満々な顔をして京子を後ろから抱きしめた。
京子は引かれるどころか逆に大胆な告白をされてしまい、唖然としてしまう。
京子の背中に頬を押し付け、優しく体をギュッと抱きしめる加奈子。
そんな加奈子に京子も顔が緩み、自然と笑顔になる。
「ぷふっ!加奈ちゃんは相変わらずだね」
「お互い様ですね!京様♪」
「でもありがとう。こんな歪んだ私も肯定してくれて…ありがとうね」
二人は顔を向き合いクスクスと笑い始めた。
京子の目からスっと一筋の涙が流れた。
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