第5話 母「えっせい?」

「私、和室で過ごしたって、言ったっけ?」


同僚に聞いてみる。


「聞いてない」


「なんでわかるの?」


「やあね、私もね、うん、どうしたもんかなー。世の中色んな娘さんがいて親がいて親子がいて、たまたまアプリでやばい作品見つけただけなのよ」


「……またアプリの話? なんなの? うちの何かがどうにかなってるの?」


「いや! ダイジョウブ! ネットに晒されたりとか、さらされ? ……してない、たぶん、全然問題無いし! ただね、ちょー、っと。ね。どうなの。これ……。興味ないだろけどこの前の『カクヨム』ってやつの話してイイ?」


そう言うと、同僚は昼休みにスマホを取り出し青いマスみたいな四角に、なんか白い記号が組み合わさったアプリのマークを見せてきた。


「私のアカウントがバレるのはいいのよ。読んでるのも毒のあるやつとか、曲者というか、灰汁が強いのは好きじゃないけど。これ……」



見やすいけれどどういう画面かさっぱりだった。


「見方がわからないし何これ」


「前言った小説が投稿できるアプリ。……エッセイ

でも、詩でも短歌でもなんでもいいの。ただし15禁かな。中学生くらいに対して刺激の強いのはNG」


「興味ない」


「うーん。うん。娘さん最近介護とか福祉の仕事就いた?」

「なんで知ってるの」

研修を受けて面接に合格したばかりだ。

「しかも、なんか、資格? ハローワークのつながりでなんかやった?」

「それは前話した通り、良くやった、かなって感じよ。電車とか苦手なのに半年勉強したみたい」

「うーん。うん。あと話は変わってさあ、車とバイク買った時あったじゃない? なんか大変そうな時」

「……なんのはなし?」


話がどこに向かうのかわからないけれど、なんだか、「掌握」。そう、「掌握」だ。

そんな感じがする。嫌な気持ちはしないけれどなんだってこんなに「事実」が「固定」されていくのか。


「アプリというか、カクヨムの説明が足りないと言うか補足ね。ズバリ、なんでも書けるのよ。アマチュアとかプロとか入り乱れた作品の宝庫。んで、日記みたいにしてもいいし、星が10000とか、評価がついたり、とにかく、自分の書いた文章を公開できるのよ。Twitterよりずっと長くて読み応えがあるけれど」

ちなみに私はTwitterは離婚調停中とか旦那とするのが好きなアカウントが好きと言う秘密があるけど、それは今回置いといて! と同僚が言う。


私はついていけない。


「アカウントって、楽天とかgmailとか、auとか。アドレスみたいなものでしょう? ログインに入力するような」


「うーん! 私も詳しくないけど、名刺とかマイナンバーカードみたいなものよ! 機械に読み込ませたら、アドレス、ID、パスワードを入力、新規作成してログインしたら、ハイ、自分だけの1LDK! みたい」


? ……。


「自室? なんでもできる部屋って言いたいの?」


「ウン、近いような違うような気もするけど、確かにアカウントってそんな感じ! んで、本題よ!」


カクヨムのアカウントを持っていて、作品を書いて、投稿、アップするってわかる? up。ネットに上がるとか記事にするとか、あ! そんな深刻な顔しないで!


とにかく、あなたの娘さんのエッセイ、私読んでるかもしれない!

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