第2話 人類というゲーム

 グループYoutuberの「マイクラ配信」を見たことがあるだろうか。

 マイクラとはマインクラフトの略であり、そのゲームの世界には、平原や森や海があり、そこには武器や家の素材となる石や木があり、食糧となる動物や小麦も存在する。ゲームの内容は、そのワールドに何も持たない状態で入り、石や鉄を使い、道具を作って敵キャラを倒し、安全な場所を作り、食糧生産し、文明を進めていくゲームだ。

 このゲームの良さは、多くの人が同じサーバにログインして社会を形成し、お互いに協力しあったり、敵対しあったりができることだろう。



 そんな見ていても面白いゲームであるマイクラだが、私はあるグループのマイクラ配信についてのこれまで流れを見て、人類史の行き先に一抹の不安を覚えた。

 その不安とは、「サーバ内の社会が成熟したら、また新しいサーバに移行するという流れ」についてだ。

 サーバが成熟する流れはいつも似たようなものだ。食糧生産は高度な省力化と大量生産がなされ、その次には装備や建築のための資材が大量に生産されるようになる。そして、各々が安定した社会の一部となったらもう終わりだ。何もすることがない。

 残されているのは、難しそうな建築物を作るか、競技性のある建築物を立ててみんなと遊ぶかだ。そんな配信は数回で終わってしまう。



 この「社会の成熟」と同じことが現実世界でも起きているように感じるのは僕だけだろうか。

 その昔、人類は木の実を集め、野生動物を追いかけ、魚を獲って生活していた。しかし、いまやそんなことをしなくても食料は生産されて私たちの前に並ぶ。

 私たちは一部の人が生産した食料が運ばれてくるのを待つだけの人生になってしまった。適当に働いて、衣食住を整えるだけの生活だ。そこには何もない。いつ死ぬか分からない恐怖も危機もない。ただ、生きているだけだ。死んでいないだけだ。



 人類はRPGをクリアした後の様に、暇になったのだ。

 昔は生きるために走り回っていた。それで死ぬまで暇がなく、間違いなく生きていた。だが、今やもうただ死んでいないだけだ。

 私たちは楽になろうと文明を進化させてきた。車を作って道路を引いて、コンピュータを作ってネット回線を引いた。私たちの生産能力は各段に上がったはずだ。なのに、私たちはどんどん忙しくなった。便利になったはずなのに。不自由になったのだ。

 これは私たちが働きたいからなのかもしれない。暇な時間をもっていると生きている意味を考えて、ただ死んでいないだけになってしまうからだ。


 私たちは仕事でストレスを貯めてから、映画を見て、本を読んで、音楽を聴いて、美味しいものを食べて、友達と談笑して、ゲームをして、趣味に時間を割く。そして、生きている幸せを見つける。

 何かを社会のために行うとお金を得ることができ、それを使って衣食住を整える。いわば仕方なく働いている。本当の空腹を感じることはなくなり、働くのことは直接的に生きる目的に結び付かない。お腹が空いたから木の実を探すようなことはしない。コンビニに入っておいしそうなものに手を伸ばすだけだ。

 


 私たちにはもう何もない。必死になれるものは何もない。

 マインクラフトの成熟した社会と同じだ。エンダードラゴンに挑む人も、遠く離れた場所で新しく社会を形成する人も、珍しい素材を追い求める人も、回路を使った難しい建築をする人も、中にはいるだろう。

 私たちの社会にも、研究者は新たな可能性を見つけようとしている。しかし、今の人類は完全に成熟している。食糧は大量に生産され、人口は増え続けた。もう人類がやり残したことはない。科学者が何かを見つけて、マイクラのアップデートのようなことがされることもあるだろう。しかし、そのブームも一瞬だ。人類に大きな一歩はない。



 ここで1つ、希望を見つけた。新サーバに人類も移ればいい。そう、人類というゲームに残されたコンテンツは新エリアだ。

 つまり、月や火星だ。


 おそらく賢い人はもう気付いているのだろう。人類はもうオワコンのゲームだと。そして、新エリアの探索を行っているのだろう。

 多くの起業家、国内海外の大金持ちが宇宙開発に興味を持つのはこういった拝啓だろうか。似たような気持ちを持っているのだろうか。

 だが、新エリアをしばらく楽しんだとして、次はまた戦争くらいしかコンテンツないよなぁ。。。



以上


もうつあるふぁ


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眠れない夜は考え事を。 もうつあるふぁ @moutsuarufa

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