第31話 リリカちゃんの……彼氏!? その2

※前回までのあらすじ


拙者のリリカ殿と謎のイケメン配信者マーやん殿が何やら楽しげな様子。

これは放っておけない。マーやん殿の嫌なところを見つけ出し、幻滅させてやるでござる!!



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「お〜、ホンマに書斎に鍵があった。マーやんやるやん」


 薄暗い書斎で、リリカ殿がマーやん殿とハイタッチをする。


 ここ城型ダンジョン『ツクヨミ』は、散らばったヒントをもとに鍵を見つけることで、上の階へ進めるのだ。

 当然、モンスターが出現しては邪魔をしてくる。


「はは、まだ一階だからね、こんなもんさ」


「ほな上に行こか」


 まーたふたりで先頭を歩いて進んでいく。

 その後方で、拙者はこはる殿と並んでマーやん殿を睨んでいた。


「ぐぬぬ……いまのところ欠点はないでござる」


「勇気があり、風魔法スキルも強力でしたね。それに頭も良さそうです」


「うぅ、このままでは拙者のリリカ殿が奪われてしまうッ!!」


 もし拙者が変化の術を使えたら、マーやん殿よりもイケメンな殿方になれたのに……。


「おや? サユキさん、後ろから誰か来ます」


「どうせ他の冒険者でござろう」


 いまはそれどころではないのだ。

 マーやん殿の欠点を探し出し、リリカ殿を幻滅させる任務を遂行中なのだから。


「いや、あの人は……」


「おーっほっほ!! わたくしですわ〜!!」


 なんだキューリット殿か。

 ピユシラ殿はいないようだ。


「奇遇ですわね!! 今日こそわたくしの魔法でぎゃふんと言わせてやりますわ!!」


「うるさい!! スリープ!!」


「うぎゃ!!」


 キューリット殿を眠らせた。


 あれ!? リリカ殿たちがいない!!

 少し目を離した隙に逸れてしまった!!


「追いかけるでござる」


 急いで2階へ駆け上がる。

 早くしなければ。

 このままではマーやん殿が獣となり、リリカ殿を襲いかねない!!


「きゃーっ!!」


「リリカ殿の声!!」


 廊下を駆け、声がした部屋の扉を開ける。

 ここは、キッチンか?


 キッチンにてリリカ殿が……モンスターに襲われていた。

 空中を浮遊するゴーストモンスターだ。


 よかった、マーやん殿に襲われたわけではかなったか。


「サ、サユキすまん、腰抜かしてもうた」


「い、いま拙者が助け……」


 待てよ、ここであえて助けずにいたら、マーやん殿がモンスターにやられて、カッコ悪くなるのでは?


「サユキさん」


「こはる殿?」


「いますべきことをしましょう」


「……」


 そうだ。

 なにを考えていたんだ拙者は。


 守らなければ、リリカ殿まで危険に晒すところだった。

 とりあえずホーリースパークでゴーストモンスターを消滅させる。


 マーやん殿が、リリカ殿に手を差し伸べた。


「立てる?」


「うん、ありがと」


 リリカ殿は立ち上がると、照れくさそうに笑った。

 幸せそうなふたり。


 一方拙者は、愚かなダメ忍者。

 拙者には、リリカ殿を独占する資格なんて、ないのかもしれない。


「あかん。もう18時や。今回はこの辺で帰ろうや」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 みんなで神殿の外に出る。


「ほなマーやん、またね」


「あぁ、それしてもリリカ、本当綺麗になったね」


「ふふ、恥ずいからやめーや」


 マーやん殿とリリカ殿が軽くハグをする。

 その後、拙者とこはる殿に会釈をすると、マーやん殿は去っていった。


「じゃあ、私も帰りますね」


 こはる殿もいなくなる。


「ほな、私らも帰ろうか」


「……」


「なんや、浮かない顔して」


「結婚式のスピーチは、任せるでござる」


「は?」


「ご祝儀は勘弁してほしいでござる。拙者、お金ないので」


「なに言うとん?」


「マーやん殿と、お幸せに」


 拙者、決めたのだ。

 リリカ殿の幸せが拙者の幸せ。

 ならば、心から祝福してやろうと。


「どういうこと?」


「だって、彼氏でござるでしょ? マーやん殿」


「彼氏? ちゃうちゃう」


「へ?」


「親戚や。お母さんの姉の息子。小さい頃によう遊んでもろたから、今でも心を許してるだけや」


「ええええええええ!!!!????!?!!??」


 じゃ、じゃあ拙者のいままでの不安は……杞憂だった!?


「向こうが用があってこっちに来たから、久々に会うことになっただけやで。だいたい、私は年下好きやし」


「そ、そうだったのでござるかあ〜。よかった〜」


「よかった? ふふ、さてはサユキ、嫉妬したんやろ」


「し、してないでござる!!」


「嘘が下手やね。ていうか、しばらく彼氏を作る気なんかないで。なんせ、危なっかしい自称忍者の面倒を見んとあかんから」


「うぅ〜、リリカ殿〜」


 思わず抱きついてしまった。


「おー、よしよし。まったく甘えん坊やねえ、サユキは」


「拙者、いろいろよくないことを考えちゃったでござるよ〜」


「ふふ、そんなに私のこと好きなん? かわええな」


「リリカ殿〜!!」


 はぁ、リリカ殿の匂い、落ち着く。

 やっぱりリリカ殿は、拙者だけのリリカ殿であってほしい。


「今夜も一緒に寝たいとか言うんやろ」


「寝たいでござる〜!!」


 リリカ殿。

 拙者の初めての友達で、姉のような、母のような存在。


 大好きだ。





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※あとがき


一件落着というわけで、次回から新章です。

ぐ〜んと話が進む予定です。


ピユシラの過去、こはるちゃんの謎。

キューリット私生活。


シリアス成分も……増えたり減ったり。


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