第29話 手裏剣の修行!!

 これまで、こはる殿は拙者と共に散々走り込んできた。

 体力、俊敏性、瞬発力は申し分ない。


 ならば次なる段階は……。


「今日から手裏剣の修行でござる!!」


 近所の川岸に、何体もの藁人形を設置する。

 時刻は朝の4時。この時間ではまだ誰もいない。


「こはる殿、肩に自信はあるでござるか?」


「ないです。でも、がんばりますっ!!」


「その意気でござる!!」


 ちなみに、今回からドローンにて修行配信を行う。

 どんな修行をするのかも、忍を増やすためには必要なはずだから。



:がんばれー


:ギリギリ起きれた


:むしろ寝ないで待ってた


:こはる殿ちゃん、真剣にお付き合いしたすぎる



 案外いるものだな、視聴者。


「ではお手本を見せるでござる。とりゃ!!」


 ズバッと、藁人形の腹に手裏剣を命中させる。


「すごいです!!」



:刺さらず落ちたぞ


:威力弱すぎて落ちたぞ


:刺さってない


:肩が弱すぎる



「ま、まあ、いまのは手加減したのでござるよ。やってみるでござる」


「はい!! えーっと、狙いを定めて……えい」


 こはる殿の投げた手裏剣が、見事藁人形の頭部に突き刺さった。

 突き刺さっちゃった……。


「なかなかやるでござるな」


「サユキさんの指導のおかげです☆」


「次は連続して当てるでござる!!」


「はい。えい!! やあ!!」


 投げる手裏剣をすべてが、次々と複数の藁人形に刺さっていく。

 こ、こはる殿の才能が恐ろしい!!


「じゃ、じゃあ次は、同時に2体の人形に刺すでござる」


「同時に?」


「見ているでござる」


 まず手裏剣を軽く投げる。

 直後、すぐに別の手裏剣を投げ、一度目の手裏剣に当て、軌道を逸らす。

 2枚の手裏剣はちょうどYの字に別れ、それぞれ藁人形に当たった。


 刺さらなかったけど……。


「わぁ!! かっこいいです!!」


「ふっふっふ」



:すご


:それナルトで読んだぞ


:ナルトのパクリか?


:集英社に報告しとくわ



 なんのことだかサッパリでござるなあ。


「やってみます。えい!! とう!! あれ? 失敗しちゃいました」


 よ、よかった。

 これも成功されたら師匠としての拙者の格が脅かされるところだった。


「まあ、修行あるのみでござる」


「はい!!」


「これから毎朝手裏剣の修行。夜は走り込みでござる。大丈夫でござるか?」


「がんばります。はやくサユキさんのような忍者になりたいので」



:がんばれー


:こはるちゃんならなれるよ


:サユキを超えろ


:はぁ……真剣にお付き合い……



「では、手裏剣の素振り100回!!」


「よーし」


 こはる殿の素振りを眺めながら、妙な満足感に浸る。

 こはる殿はモンスターだ。人間に憧れて、自分の力を犠牲にした。

 だけど、そんなことは関係ない。


 こうして、共に修行ができている。

 それで充分なのだ。


 そんな幸福を噛み締めていると、


「見つけたぜい!!」


 うわぁ、久方ぶりに現れてしまった。

 チャラ男ギルドの色黒殿が。


「もー、なんでお主がここに」


「配信を見て急いで来たんだぜ。今日こそお前らと遊ぶためになあ!!」


「朝4時でござるよ?」


「チャラ男に時間は関係ねえんだぜ」


 まったく、元気な男でござる。

 ダンジョンじゃないからスキルは使えないというのに。


「こはる殿は素振りを続けるでござる。色黒殿、わかったでござるよ。遊べば良いんでござるでしょ?」


「え」


「もううんざりでござる。で、なにして遊ぶんでござるか? けん玉でござるか? カルタでござるか? 竹馬でござるか?」


「遊びのレパートリーがおばあちゃんかよ。いいか? 俺らの言う遊びってのはな!!」


「遊びってのは?」


「だから……その……」


「はっきりするでござる!!」


「ええい!! 黙れ!! 来てくれ!! 今日の助っ人たち!!」


 たち?

 まさか今回は2人!?


 誰かが走ってくる。

 あれは……。


愉快田ゆかいだハシロウ45歳殿とマッシュヘアー殿!?」


 拙者が過去に退けたチャラ男ギルドのメンバー!!


「今回は逃さねえぜチビっ子忍者13歳」


「ふふふ、僕は優しい男だよ」


 くっ、1体3でも構わない。

 拙者がぶっ倒すでござる!!


「サユキさん……」


「こはる殿は下がっているでござる!!」


「私も戦います」


「お主では無理でござる」


「いえ、いつもサユキさんに守られているのですから、今回は……」


「こ、こはる殿……」


「いきます、サユキさん直伝の、手裏剣殺法です!! てい!!」


 こはる殿が手裏剣を2枚投げた。

 ま、まさか……。


 2枚の手裏剣はぶつかり合い、Yの字に軌道が逸れて、


「ぐえ」


「ぐおっ!!」


 ハシロウ殿とマッシュ殿の額に突き刺さった。


「やった☆ 成功しました!!」


「こ、こはる殿……」


「力を抑えたので、刃は頭蓋骨で止まってます☆」


「それはよかった……」


 いやよくない!!

 よくなああああい!!


 拙者の、師匠としての格がああああ!!!!


 色黒殿は仲間2人を脇に抱えると、


「お、覚えとけ〜」


 そそくさと逃げていった。


「無事ですか? サユキさん」


「うぅ……こはる殿の才能にはつくづく驚くでござるよ〜」



:さすこは


:こはるちゃんすごい!!


:サユキ超えたな


:はぁ〜しゅき♡



「で、でも忍者の道はまだまだ険しいでござるからね!!」


「はい、がんばります☆」


 ほどほどに頑張ってほしい。

 しかし、こはる殿が今後の忍界を牽引してくれるなら、安泰……なのかも。


 複雑だ……。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき


45歳のおっさんとマッシュヘアーの青年が仲良く走ってやってくる午前4時。


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