第24話 忍者vs魔女 第2ラウンドッッ!!

 とある日のお昼。

 拙者はひとり、洞窟ダンジョン『サルタ』にきていた。


 配信はしない。

 なぜならこれは、修行だから。


 適当なモンスターを相手にして、忍術や体術を磨くのだ。


「むっ、さっそくモンスターでござるな」


 ゴブリンが襲いかかってくる。

 殺されはしないものの、珍しい物や衣服を奪ってくるらしい。


「ちょうどいい、くらえ!! 忍法・爆竹の術!!」


 お手製の爆竹でゴブリンをビビらせて、


「手裏剣殺法!!」


 自慢の手裏剣術でトドメを刺す。


「ふぅ〜、ざっとこんなもんでござる」


 ゴブリンより、腹を空かせたクマの方がよっぽど手強い。

 さて、お次はどんなモンスターが相手だろうか、と思った矢先、


「ぎやーーっ!!」


 ダンジョンの奥から女性の叫び声が聞こえてきた!!

 このパターン、3度目!!


 とにかく駆けつけると、そこには!!


「お、お主は!!」


 先日、拙者に勝負を挑んできた赤髪の魔女、キューリット殿が、デカスライムに襲われていたのだ。


「あ、あなたは!!」


「とにかく、助けるでござる!!」


 忍術の修行をしに来ているが、人助けならば躊躇いなく魔法を使う。


「オーバーフラッシュ・フリージング!!」


 デカスライムを一瞬で凍結させた。

 時間が経てば解凍されるだろう。


「大丈夫でござるか?」


 キューリット殿に手を差し伸べる。

 なんだか毛嫌いされているので、拒否されるかと思ったが、素直に手を握って立ち上がってくれた。


「ふん、感謝だけはしておきますわ」


「たしか魔女でござったか。配信はしていないようでござるが」


「今日は鍛錬の日なのですわ。魔女として、日々魔法の修行は欠かせませんもの」


「おぉ!! 拙者も忍術の修行をしていたでござる!! 奇遇でござるな」


「一緒にしないでくださる!? わたくしの伝説的なデビューを台無しにしたくせに〜」


 やはり拙者に逆恨みしているようだ。

 魔女の末裔としてダンジョンデビューしたかったのに、拙者の魔法スキルレベル999に話題をかっさらわれてしまった恨み。


「そんなこと言ったら、拙者だって本当は忍術スキルがよかったでござる。しかも悪いやつが忍術スキル持っていたでござるし」


「わたくしには、魔女の末裔として魔女界を盛り上げる使命があるのですわ!! わたくしのためにも、配信者を引退してほしいですわね」


「拙者だって忍界を盛り上げる使命があるでござる!!」


「配信でほとんど忍術使ってないじゃありませんの」


「ぐぬぬ。では拙者が魔法をバンバン使って魔女界とやらを盛り上げるので、お主が引退すればいいでござる。はい、忍法・論破の術」


「なんですって〜!!」


「なんでござるかーっ!!」


「勝負ですわ!!」


「望むところでござる!!」


 ぐっと拳を握る。

 魔女だかなんだか知らないが、拙者の最強忍術でコテンパンにしてみせる!!


「先手必勝ですわ。あのとき見せられなかったわたくしのスキルの恐ろしさ、思い知らせてあげますわっ!!」


 キューリット殿のスキル!?

 まさか拙者が魔法スキルレベル999だったように、キューリット殿にも強力なスキルがあるのだろうか。


「小型化スキルでちゅわ!!」


 キューリット殿の身長がグググと縮む。

 小さくなった、というより、幼くなった。

 まるでキューリット殿が10歳くらいになったようだ。


「子供になるスキル?」


「恐ろしいのはこれからでちゅわっ!! 第2のスキル、発動!!」


「なぬ!?」


 2つ目のスキル!?

 以前、リリカ殿が言っていた。

 稀に複数のスキルを持つ者がいると。


 まさか、キューリット殿がそうだとは……。


「回転スキルでちゅわ〜!!」


 身を屈め、人間球体のようにゴロゴロと転がってくる。

 しかも、かなり速い。


 咄嗟に回避する。


「小さくなったことで回転の速度も突進スピードも増したのでちゅわ。これぞ2つのスキルを組み合わせたわたくしの必殺技『ロンリーローリングロリアタック』でちゅわ〜!!」


 ロンリーローリングロリアタック。

 なんと面妖な技。

 しかし、


「見切ったでござる!!」


 迫りくる回転キューリット殿を、両手で軽く受け止める。


「なんでちゅって!?」


「小さくなったのなら、軽くなったということ。つまり、破壊力が皆無ということでござる!!」


「っ!?」


 回転が止まり、キューリット殿が元の大きさに戻る。


「それともうひとつ」


「な、なんでちゅの?」


「ロリになるスキルも、回転のスキルも、どっちもショボいでござるよ!!」


「ガーンッッ!! しょ、ショボ……」


「今度は拙者の番でござるな」


 距離を取り、両手で印を結ぶ。

 そして、


「くらえ!! 忍法・麒麟逆鱗武者降臨の術!!」


 最強忍術を発動しようとした、そのとき、


「なにしてんねん」


 突然リリカ殿が現れた。


「リリカ殿!? なぜここに!?」


「なぜここにやあらへんがな。まったく、今日クール便届くから家におってって言うたやろ」


「あ」


「せっかく与えたスマホも家に忘れとるし」


「うぅ」


 拙者としたことが……不覚。


「ほら、帰るで」


「ま、待つでござる!! キューリット殿との決着が!!」


「罰としてサユキの負けで決定や。ほらキビキビ歩く」


「しょ、しょんな〜!!」


 リリカ殿の襟を掴まれ、拙者は強制的に退散させられてしまった。

 とほほ、これではまるで犬でござる。


 どんどん遠ざかっていくキューリット殿が、高らかに笑った。


「ほーっほっほ!! よくわかりませんが、わたくしの勝ちですわーっ!! しょせんはザコ忍者、由緒正しき魔女の末裔であるわたくしの敵ではなかったようですわね」


「ぐやじぃでござる〜!!」


 拙者が泣きべそかいていると、おもむろにリリカ殿が立ち止まった。

 さらにくるっと反転して、キューリット殿へ歩み寄る。


「前から言おう思っとったけど、あんたがしてるのはただの嫉妬やろ?」


「な、なにを……」


「みっともないで。サユキは自分より忍術が使える他人を前にしても嫉妬せえへんかったし」


「……」


「人間性は、あんたの負けやね」


「カッ!!」


 あ、キューリット殿が固まった。

 リリカ殿からの思わぬ精神攻撃にノックダウンされたようだ。


 むむむ、今回の勝負、引き分けといったところか。


「キューリット殿、この決着はいずれつけるでござる!!」


「あんたははよ帰る。まったく、今晩はおかず抜きやね」


「拙者が作ってるのに!?」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき


次回、そんなキューリットちゃんが主人公の回です。

ギャグ回……ではなく、話の根幹を揺るがすシリアス回だったりします。

乞うご期待ッッ!!


応援よろしくッッッッ!!!!

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