第23話 忍者vs魔女

「魔女の一族の……末裔!?」


 赤髪の少女、キューリット殿が誇らしげにどんと自分の胸を叩いた。


「ええそうですわ。長い歴史を持つ魔女の一族ですのよ!!」


「ははは、魔女なんているわけないでござる。漫画の読みすぎでござる」


「忍者を自称してるあなたに言われたかないですわ!!」


 なぬ。こやつ、拙者が忍者であると知っているのか。

 あ、いつも配信でアピールしているからか。


「その魔女が何故チャラ男ギルドに協力してるでござるか? お主も拙者たちと遊びたいのでござるか?」


「そんなわけないですわ!! ムカつくんですのよ、衰退した魔女界を救うため、配信で魔法の凄さをアピールしようと思いましたのに……ぜんぜん目立てないことに!! 魔女ですらないあなたが魔法スキルレベル999なんて使うから!!」


「拙者だって好きでこんなスキルに目覚めたわけではござらん!!」


「うるさい!!」


 事情はわからぬが、おそらくこやつは拙者を逆恨みしている。

 だから同じく拙者たちの敵であるチャラ男ギルドと手を組んだわけか。


「くらいなさい!! 魔女一族に伝わる秘伝の魔法、ファイアーボール!!」


「ならば!! 忍法・火遁放射の術!!」


 キャリット殿の火球と、拙者の火炎放射がぶつかり合う。

 魔法の忍術のぶつかり合い。これは……これは負けられぬでござる!!


 などと意気込んでいると、リリカ殿がため息をついた。


「ライターの火にスプレーをかけた程度のザコ火炎放射と、丸めたティッシュを燃やした程度のザコ火球の戦いなんて盛り上がらんで」


「誰がザコ火炎放射でござるか!!」



:手品対決?


:キューリットちゃんかわいい


:なにこれ


:舐めプすな


:舐めプ合戦か?



 くぅ〜、視聴者まで〜。

 お、キューリット殿も悔しがってる。、


「誰がザコ火球ですって〜!!」


 あれ、もしかして拙者……キューリット殿と仲良くなれるんじゃ……。


「こうなったら仕方ない。わたくしのスキルを見せてあげますわ」


「そうはさせぬ!! ホーリースパーク!!」


 極大のビームを発射して、キューリット殿を吹っ飛ばす。


「うぎゃああああ!!!!」


 もちろん、加減はしている。


「お、覚えてらっしゃ〜い」


 と捨て台詞を吐きながら、キューリット殿は空の彼方へ消えていった。

 なんだったんだろう、彼女は。







「さて」


 残すは、色黒のみ。

 拙者が睨むと、色黒はググッとたじろいだ。


 拙者に代わって、リリカ殿が口を開く。


「私ら、はよキューティクルラビットちゃんを愛でたいんや。さっさと帰り」


 よしよしとリリカ殿がラビットを撫でる。

 むむ、羨ましい。


「へっ、そう簡単に引き下がれるかよ!! 緊縛スキル!!」


 色黒の手元に縄が出現する。

 色黒が縄を振るうと、先端が自動で動き出し、


「あ!!」


 なんとキューティクルラビットを捉えたのだ!!

 色黒の手に、ラビットが渡る。


「こいつを返して欲しかったら俺と遊ぶんだな!!」



:こいつほんま


:人間のクズがよ


:サユキ、やっちゃって


:やられ役のくせに



 確かにこれは許せん。

 か弱きモンスターを盾にするとは、品性下劣。


 拙者が懲らしめてやる!! そう意気込んだとき、


「やめなさい」


 小さく、けれど力強く、こはる殿が声を発した。

 いつも笑顔なのに、珍しく眉をひそめて、怒りを顕にしている。


「その子、とても怖がっています。あなたのことが嫌いだと言っています。誰にも害を為してないのに、こんな仕打ちあんまりです。いますぐ降ろしてください」


「へっ、だったら俺とーー」


「降ろしなさい」


 途端、色黒の腕がだらんと下がり、キューティクルラビットが落下した。

 大した高さではなかったので、ラビットはこちらへ逃げてきて、こはる殿の足に擦り寄った。


 こはる殿は怖がる兎を抱えて、優しく微笑み、頭を撫でた。


「よしよし、怖かったですね」


 ただ、それだけで終わりではない。

 色黒が突然、泡を吹いて気絶したのだ。


 これは……いったい……。


「こはる殿」


「まぁ!! すごいですサユキさん。さりげなく魔法を使っていたんですね!!」


「え?」



:まじで?


:魔法名を叫ばなくても発動できるのかよ


:なんて魔法?


:さすサユ



「え? え?」


 混乱する拙者の肩を、リリカ殿が叩いた。


「これにて一件落着やねえ」


「えっと」


「こはるちゃん、そろそろその子、仲間たちのところに連れていってあげよか。どっかにおるやろ」


 そうですね。とこはる殿がハニカム。

 ラビットの仲間を求めて、こはる殿が駆け出した。


「ふふふ、気持ちのいい場所。なんだか走りたくなりますね」


 その後ろ姿を眺めながら、リリカ殿に問う。


「リリカ殿、さっきのなんでござろう。拙者の魔法じゃないでござるよ」


「知っとる。でも、サユキの魔法ってことにしとこ」


「何故でござるか?」


「隠しておきたいことがあるんやろ、こはるちゃん。ほら私らも走ろか」


「……はいでござる」


 色黒を気絶させたのは、十中八九こはる殿だ。

 それはおそらくリリカ殿も気づいている。


 でも、こはる殿のスキルは『人を導く』天使スキルのはず。


 いや、それはこはる殿が説明しただけで、本当かどうかわからない。

 そもそも拙者は、天使スキルのことなど何一つ知らない。


 白雲こはる殿。

 いったいお主は……。





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※あとがき


キューリットちゃんはレギュラーキャラになる予定です。

やったね!!


こはるちゃんは……メインヒロインになるかもしれません。


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