第22話 助っ人外国人!?

「はぁ……はぁ……キューティクルラビットでござるか?」


 こはる殿と朝の走り込みを終えたあと、彼女が突然その名を口にした。


「はい。電車で1時間ほどかかるダンジョンに生息しているんです。まるで、わたあめみたいにふわふわで、もこもこなんですっ」


「はぁ……はぁ……な、なるほど。で、それを実際に見てみたいのでござるな?」


「はい!! 一緒にどうでしょうか?」


「構わないでござる!! どのみち、凶悪モンスターはどのダンジョンに出るかわからないでござるから」


「やったあ☆ ありがとうございますっ!!」


「これも弟子のためでござる。……それよりこはる殿」


「はい?」


「なーんで拙者より疲れてないでござるか」


「さあ?」


 拙者は忍者として毎日走り込んでいるというのに!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 てなわけで、リリカ殿を誘って拙者たちはキューティクルラビットが生息している『カヤノ』へ向かった。

 受け付けを済ませて、神殿でダンジョンにワープすると……。


「おぉ!!」


 一面の野原が広がっていた。

 ここは……本当にダンジョンなのだろうか。

 青い空、白い雲、眩しい太陽、心地よい風。


 遠くに見える生き物は……確かにモンスターだ。

 翼が4枚の鳥や、ドリルのような角が生えた獣がいる。


「すごいところでござるなー」


「カヤノは日本でも特に人気のダンジョンなんや。階層はなく、でっかいドーム状の特殊な空間。ここは中心地で、他に荒野エリア、熱帯雨林エリア、森エリア、山岳エリアにわかれているんやで」


「ほえー」


「朝があれば夜もある。ボスと呼ばれるような強いモンスターはおらんくて、やから老若男女様々な人間が来るんや。ほら、あそこ」


 リリカ殿が指をさす。

 つられて顔を向けると、確かに中年ぐらいの男女が集まって何やら談笑していた。

 格好的に、山登りでもするのだろうか。山岳エリアとやらで。


「近くに小屋があってな、そこでスモールペガサスに乗せてもらえるんやけど……いらんか。キューティクルラビットは野原エリアにおるらしいし。……見つかるとええな、こはるちゃん」


「はい!! 楽しみです!!」


「んじゃ、配信しよか」



:はじまた


:にゃーん


:こはるちゃんだああああああ


:すっかりいつメン


:あぁ〜、真剣にお付き合いしたくなってきた



「今日はただのんびり、キューティクルラビット見つけるで〜」


 のんびり。リリカ殿がそう言った通り、とても穏やかな配信が続いた。

 平和に暮らしている生き物を観察して、歩き回って、まだ一度も忍術も魔法を使っていない。

 でもたまには、こういうのもアリかな。


「あ、あの子です!!」


「おぉ!! たしかに、わたあめみたいにモコモコでござるな」


 本当に丸々としていて、白く、毛がふわふわとしているウサギがいた。

 まるでぬいぐるみというか、何かのマスコットのように愛らしい見た目。

 実際に触ったらどんなに柔らかいだろう。


「ゆっくり近づくでござる」


「私に任せてや。猫化スキル発動!!」


 リリカ殿が猫人間になる。


「猫やから足音がせえへんのや」


「拙者より忍者っぽいことしないでほしいでござる!!」


 リリカ殿がラビットの後ろからそろりそろりと近づいていく。

 ラビット、すなわちウサギ。バレたら超スピードで逃げること間違いなしのはず。


「ごくりでござるな」


「ふふふ」


「どうしたでござるか? こはる殿」


「あの子、私たちのことを『とっくに気づいているよー』って言ってます。無害なのがわかっているから、逃げてないだけみたいです。人間慣れしているんですね」


「言ってますって……」


「……って、私が勝手に思っているだけです☆」


 間合いを詰めて、リリカ殿が止まる。

 それから本物の猫科動物のように一瞬で距離を縮めて、ラビットを捕まえた。


「わ〜、すごいで、ほんまにモフモフや〜」


「せ、拙者も触りたいでござる」


 と、近づこうとしたそのとき、


「見つけたぜ!!」


 嫌な予感がして振り返ると、案の定。


「うわ、色黒殿」


 あのチャラい色黒が、またも拙者たちの前に現れた。


「まったく、懲りないやつでござる」


「へへへ、チャラ男ギルドがムキになってよお。メンツのためにも、なにがなんでもお前らと遊べってなあ」


「遊んでほしいなら暴力なんて使わず、きちんとお願いすればいいでござるでしょ」


「へへへ、勝てば一緒に遊ぶ。負ければ引き下がる。それがチャラ男ギルドのやり方なんだぜ」


 勝手にルールを押し付けないでほしい。

 ていうか、何度も負けてるのに全然引き下がっていない。

 食い下がっているではないか。


「めんどくさいでござるな〜。だいたい、なにして遊ぶでござるか」


「それは……。その……ほら……」


「なに顔を赤くしているでござるか」


「いやだから、なあ?」


 色黒がリリカ殿の方を向いた。


「私に振らんといてや」


「とにかく!! ここで会ったが百年目!! 今回も助っ人を連れてきたぜ!! しかも外部からの助っ人外国人だッッ!!」


 上空から気配を感じる。

 誰かが……降りてくる。

 細い体。たぶん女性だ。


 助っ人とやらが着地した。

 長く赤い髪、魔女のような格好、手に持った長いホウキ。

 いったい、彼女は……。


「あなたですわね、魔法スキルレベル999というのは」


「お主は……何者でござるか」


「わたくしはキューリット・イム・レンエスカ。誇り高き魔女の一族の……末裔ですわ!!」






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※あとがき


次回、忍者vs魔女!!

ちなみにリリカちゃんはノーパンで寝る派です。


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