三章の術ッッ!! ちょっぴりシリアス編

第20話 サユキの秘密・前編

 拙者のアカウントが一時的にBANされたので、今日はリリカ殿とのんびり過ごすことにした。

 どうせならこはる殿も家に来て食事をしようと誘ったのだが、


「ふふふ、今日は家にいないといけないので」


 と断られてしまった。

 家にいないといけないって、なんだろう。


「リリカ殿、お昼ごはんできたでござる〜」


「お〜、カルボナーラやん。ええな」


 テーブルにつき、さっそく食す。


「いただきます」


「ほんま料理上手いよね。忍術学園の……先生? ちゅーのに教わったん?」


「そうでござるよ。先生はなんでもできる超一流の忍者なんでござる。戦後の混乱期から、闇に蠢く悪党共を成敗したり、国のために危険な任務をこなしてきた最強忍者でござる」


「悪党を成敗って……じゃあサユキも、誰かを……」


「拙者はまだ未熟ゆえ、暗殺の仕事はしたことないでござる」


「そ、そうなん……。なんか、よかった」


 だが、そんな先生も今年で齢93歳。

 いつ天寿を全うしてもおかしくない年齢。

 だからこそたくさんの後継者が必要なのだ。


「お母さんやお父さんは……おらんのやっけ?」


「父は任務の途中に亡くなって、母もそのときの怪我が原因で亡くなったらしいでござる。拙者が物心ついたときにはいなかったので、顔も覚えていないでござるよ」


「えぇ〜、なのに忍者やるん? サユキは。だってもしも……」


「だからこそ忍者をやるのでござる。父や母の生き様を、拙者も継ぐのでござる」


「ほーん。まあ、無茶せんように」


 父や母が死亡した原因を作った任務とは、どんなものなのか。

 先生は一切話してくれない。


「リリカ殿の親はどんな人たちなのでござるか?」


「どんな、か〜。普通の親やで。普通に愛してくれるし、普通にウザい」


「そんな親と離れて上京して……そんなにダンジョン配信したかったのでござるか?」


「まあねえ」


 リリカ殿のフォークが止まる。

 じっと、拙者を見つめてくる。

 綺麗な瞳だ。見惚れて、吸い込まれてしまいそう。


「ま、サユキになら話してもええか」


「?」


「たくさんの記録に残りたいねん」


「記録?」


「人はいつか死ぬやん? 私の体が消えて、いつか骨もなくなって、私物も処分される。みんなの記憶からも消えていく。子供作っても、子孫たちの記憶から消えていく。なーんもなくなる。でも、地球は回り続ける。……なんか、ムカつかん?」


「ムカつく?」


「でも記録になら、データになら、半永久的に残り続ける気がするねん。私の声も、顔も、性格も、癖も、良いところも悪いところも」


「たしかに……」


「だから、ダンジョン配信しとるんや。というか、目立つコンテンツならなんでもよかったんやけど。……っていう、中二病っぽいハズい理由。誰にも言わんといてな」


「言わないでござる」


 リリカ殿、まるで拙者みたいだ。

 拙者も、忍者の歴史を絶やさないように配信をしているから。

 だから拙者たちは気が合うのかもしれない。


「ふぅ、ごちそうさまでござる」


「行儀ええなあ。よっぽどしっかり躾けられとるんやなあ、先生に」


「その先生のためにも、頑張るでござる」


「会いにいかんの? たまには」


「勝手に抜け出した身。いまさら帰れないでござるよ」


「え〜。関係ないと思うで」


 と、家の呼び鈴が鳴った。

 配達でござろうか。それとも何かの勧誘?


「拙者が出るでござる〜」


 ガチャっとドアノブを捻り、ドアを押す。

 訪れてきたのは、アゴ髭を蓄えた老人のーー。


「せ、先生!!」


「久しぶりじゃな、サユキ」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき


新章です。

これまでノリと勢いでおざなりにしてきたダンジョンの設定や秘密が明らかになっていくと……思います。


応援よろしくお願いしますっ!!

しまあああああすッッッッ!!!!

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