第16話 サユキ、最大のピンチ!?

 今日は拙者とリリカ殿、そしてこはる殿の3人でダンジョン配信だ。

 訪れたのは前回同様、迷宮ダンジョンククリ。


 今回は前回断念した2階層にチャレンジするのだ。

 ダンジョンのスタート地点で、リリカ殿が配信を開始する。


「にゃんにゃ〜ん。リリカやで〜」



:にゃーん


:きちゃ


:こはるちゃんがいる!?


:こはるちゃん!!


:にゃーん


:こはるちゃんだああああ


:真剣にお付き合いしたいよ〜


:あ、サユキ



「せやでー。今日はサユキ、こはるちゃんも一緒や」


 こはる殿がペコリと頭を下げた。


「よ、よろしくおねがいしますっ」


 案の定、コメント欄は大騒ぎ。

 こはる殿は本当に人気だなあ。


 そんなこんなで、迷宮を進む。

 訪れるたびに迷路は形を変えるのだが、拙者のサーチ魔法とこはる殿の天使スキルを使えば問題はない。


「じゃあサユキさんは、7体の凶悪モンスターさんを倒して、願いを叶えてもらうのが目標なんですね」


「そうでござる。都市伝説らしいでござるが、試してみる価値はあるでござるよ」


「わあ!! サユキさんならきっと大丈夫ですよ。私も、できる限りサポートしますね」


「いいんでござるか? 倒して」


「凶悪化したモンスターさんは……残念ながら治らず、ずっと凶暴になったままですから、暴れて配信者さんや他のモンスターさんを傷つけてしまわないように、致し方ありません」


「かたじけない!!」


 いっそこのダンジョンで3体目が出現してくれたらいいのだが。

 迷宮を迷わず進み、1階の奥までたどり着く。

 たしか、Cランクの冒険者はここまでだったような。


「ダンジョンでの実績によって冒険者ランクがアップするやろ? サユキもこはるちゃんもまだCなんや。けどな、同じパーティー内にランクが上のもんがおれば、その人基準で先に進めるんや。ちなみに私はBや」


「パーティーとは? わいわいするでござるか?」


「あ〜、チームってことや。組織の数が増えれば『ギルド』と呼ばれるようになる。ネットで集まった気の合う連中でギルドを組織することもあるんやで」


「ほう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 てなわけで、またケロベロスを眠らせて2階へ登る。

 てっきり2階も迷路なのかと思いきや、なんら平凡な一本道だった。


 それからさらに歩いてみると、


「およ」


 円形のフロアにたどり着いた。

 行き止まりのようだが、壁にいくつもの扉がある。


「リリカ殿、これは……」


「この中のどれかが正しい道への扉、ちゅーわけやね。2階はこんなんが何回か続くんや」


 これまた奇怪なダンジョンだなあ。

 などとぼんやりしていると、


「見つけたぜ、化けゴリ!!」


 拙者たちの背後から、見知った声が響いてきた。

 この声、間違いない。


「色黒殿!!」


 しつこいナンパで有名な、筋肉質の色黒男であった。


「また性懲りも無く現れたでござるか!! しかしいったい、どうして拙者たちの居場所が……」


「配信してるからだろうが!!」


「なるほど!!」


「前回、ハシロウ先輩がやられたことで、俺たちチャラ男ギルドのメンバーはカンカンだ。なにがなんでもお前らと遊ばないと気が済まねえってな!!」


「チャラ男ギルド?」


 リリカ殿が呆れ気味に解説してくれた。


「あーいうー男たちが集まった組織やね。みんなで女の子たちとわいわいしたいんやろ」


「おー」


 拙者も作ろうかな、忍者ギルド。


「何はともあれ、お主では拙者には勝てぬ!!」


「ふん、だから今回も、強力な助っ人を連れてきたぜ!! 我がギルド期待の新人、出てこい!!」


 色黒の背後から、柔らかな物腰の優男が現れた。

 なにやら独特な髪型をしているが、あれは……。


 瞬間、リリカ殿の表情が嫌そうに歪んだ。


「うげ、マッシュヘアーや」


「なんでござるか? それ」


「優しそうに見えて裏で女を殴ってる男の髪型や。浮気もしまくるで」


「なんと!!」


 マッシュがニヤリといやらしい笑みを浮かべた。


「ふふ、そんな酷いこと言わないでほしいなあ。僕はただ、楽しいお喋りをしたいだけだよ」


 いったいこやつはどんなスキルを持っているのだろう。

 恐ろしさと緊張でドキドキする。


「さあ新人!! やつらをやっちまえ!! 降参させてわいわい遊んでやろうぜ!!」


 と色黒が叫んだそのとき、拙者の全身に悪寒が走った。

 マッシュのスキルによるもの? ではない。

 彼のせいではない。


 では、この悪寒は、いったい……。


「あ、サユキさん、リリカさん、あそこ……」


 こはる殿が指さす。

 拙者たちが歩いてきた一本道から、何かがくる。


 人? 違う、人形のようだ。

 不気味で、大きな、操り人形のような容貌。


 しかも、赤い。


「凶悪モンスターや!!」



:なんつータイミング


:デスパペットだ


:凶悪化したデスパペット


:あれ、これやばい



「3体目の凶悪モンスター、つまりレベル160でござるな」


 凶悪モンスターのレベルは、これまで遭遇した凶悪モンスターの数で変動するのだ。

 フロアにいる人間の中で、もっとも遭遇回数が多い人間を対象にレベルが変わる。

 おそらく、拙者とリリカ殿が一番多いであろう。


 マッシュがデスパペットを睨んだ。


「あのさぁ、邪魔なんだけど」


 デスパペットは反応しない。


「レベル160だかなんだか知らないけど、僕のスキルの前ではーー」


 途端、パペットがマッシュの方を向いた。

 それと同時、謎の衝撃波が放たれ、マッシュを吹っ飛ばした!!


 壁に打ち付けられ、マッシュは気絶してしまう。

 隣にいた色黒が、ワナワナと震えだした。


「ふ、ふざけんじゃねえ。レベル160なんてその辺のダンジョンのボスより強いじゃねえか!!」


 パペットが色黒を睨んだ。


「ひっ!!」


 同じように色黒も吹っ飛び、気絶する。

 なるほど、念力のような力を使うのか。

 とはいえ所詮レベル160程度。まだまだ、魔法スキルレベル999の拙者の敵ではない。



:これ逃げた方がいいな


:さすがのサユキも無理か


:詰みです


:あーあ



「なにを恐れる必要がある!! くらえ、全方位ホーリースパーク!!」


 複数枚の魔法陣がデスパペットを取り囲む。

 そこから毎度お馴染みのビームを発射され、あらゆる角度からデスパペットを攻撃した。

 これでデスパペットも即死のはずだ。


「よし、3体目討伐完了でござるな」


「い、いや、まだやでサユキ」


「へ?」


「よお見てみい」


 ホーリースパークが止み、舞い上がった土煙も収まっていく。

 いつもなら跡形もなく、残骸すら残っていないはずなのに……。


「そ、そんな!!」


 デスパペットはピンピンしていた。

 傷ひとつない。


「な、何故でござるか!?」


「デスパペットは、魔法無効の耐性がついとるんや」


「それって」


「デスパペットに魔法は効かない。ったく、よりにもよってこいつが凶悪モンスターとして出でくるとは」


「ええええええええ!?!!!???」


 魔法が通用しない!?

 じゃ、じゃどうやって倒せばいいんだ!!

 魔法がない拙者なんてただの忍者!!


「はっ、そうか」


 忍者……忍術……。

 魔法がダメなら、忍術で……。

 ついに拙者の忍術が日の目を浴びるときが……来たッッ!!





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき

チャラ男ギルドとの戦いは定期的にやっていきたいですね。


応援よろしくお願いしますっ!!

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