第13話 白雲こはるちゃん

※前回までのあらすじ。


 ハシロウの悪魔スキルによって、拙者の潜在意識に眠っていた悪の心が呼び起こされてしまった!!



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 拙者の頭の中で、もうひとりの拙者が語りかけてくる。


『みーんな遊んだりダラダラしたり旅行したりしてるのに、いつまで意味のない修行をするでござるか?』


「な、鳴り止めもう一人の拙者!!」


『忍者なんかやめて、ギャルになろうでござるよ』


「うわああああ!!!!」


 こ、このままでは声に押されて、本当に忍者を辞めかねない!!

 最強の魔法スキルでどうにかしたいけど、どうすればいいのやら。


 だ、誰か助けて!!


「ううぅぅぅぅ!!!!」


「惑わされてはいけません!!」


「はっ!!」


 拙者が助けた少女、白雲しらくもこはる殿が、必死な顔で拙者の腕を掴んだ。


「サユキさんは、立派な忍者になるのでしょう? 煩悩や欲を振り払うのも、修行のひとつのはずです」


「こ、こはる殿……」


「これまでの努力を否定しないで!!」


「そ、そうでござるな」


 不思議と、頭の中の声が小さくなっていく。

 なんだろう。こはる殿を見ていると、荒んだ心が癒やされていくような。


 こはる殿がニコリと笑う。


「正気に戻ってよかったです」


「こはる殿、お主は……」


「私のスキルは『天使スキル』。弱き物を守り、導くスキルなのです」


「…………つまりどういうスキルでござるか?」


「弱き者を守り、導くスキルです☆」


「…………つまりどういうスキルなんでござるか!!」


「ふふふ」


 わ、笑ってごまかされた……。


「そんなことよりも」


「そんなことって」


 軽く流されそうになっている!!

 意味不明なスキルの説明を!!


「あの人たちを見てください」


 ハッとハシロウに視線をやる。

 悪魔スキルが弾かれて、ぐぬぬと顔を歪めていた。


「な、なぜ俺の悪魔スキルが!!」


「うーん、よくわからぬが、こはる殿の天使スキルの方が強かったってことでござる!!」


「…………どういうこと?」


「拙者だって知りたいでござる!! なんでもいいからくらえ!! 電撃魔法デスサンダー!!」


 魔法陣から電撃を発射し、ハシロウと色黒を痺れさせた。


「これに懲りたらしつこいナンパはやめるでござるよ!!」


「「は、はい〜」」








 ふう、これにて一件落着。

 なかなか手強い相手であった。

 まさか精神攻撃をしてくるとは。

 拙者、まだまだ修行不足なんだなあ。


「こはる殿、助かったでござる。怪我はないでござるか?」


「はい。忍者さんのおかげです」


 柔らかい笑み。

 まさに天使のようだ。


「はぁ、それにしても、こんなところで会えるなんて、幸運です」


「というと?」


「私、ファンなんです。サユキさんと、リリカさんが」


「へ? 拙者?」


「忍者さんなんて、かっこいいです。はぁ〜素敵です」


「に、忍者が素敵ぃ!?」


 これは夢?

 それとも幻?


「て、天使スキルとやらの幻か……」


「違いますよ、私の本心です」


「な、なんと!?」


 ま、まさか拙者のファンと、それも忍者としての拙者のファンと会えるなんて!!

 うぅ……拙者の努力は無駄じゃなかった。


「あの!! よければぜひ!! 忍術を見せてくれませんか!?」


 こはる殿の目が輝いている。

 まるで太陽のようにギラギラだ。

 ま、眩しい!!


「ふっふっふ、良いでござるよ。そうでござるなあ、では、少し後ろを向いているでござる」


「はい!!」


 こはる殿が背を向けた。

 その隙に、懐から大きな布を取り出して、壁際で広げる。

 拙者は忍者なので、懐にはたくさんの忍者グッズが入っているのだ。


「いいでござるよ」


 こはる殿が振り返った。


「あれ? サユキさん? サユキさんがいない?」


「ふふふ、これぞ忍法・隠れ身の術でござる!! 壁と同じ模様の布で擬態しているのでござる!!」


「わあ!! すごいですっ!!」


「どこに隠れてるのか、わからぬでござろう」


「ここですか?」


 あ、布を剥がされた。


「な、なぜ!?」


「ここから声がしたので」


「……は、ははは」


「うふふふ」


「あはははは!!」


「もう、うっかりさんですね。でも、かっこいいです」


 うひ〜!! 気分がいいでござる。

 決めた!! こはる殿を絶対忍者にするでござる。

 こはる殿ならきっと大丈夫でござる。


「それにしても、こはる殿はどうしてダンジョンに?」


「好きなんです。ダンジョンにいるモンスターさんが」


「モンスターって妖怪でござるよね? 好きとは?」


「スライムさんもゴブリンさんもドラゴンさんも、可愛いです」


「可愛いでござろうか」


 天使なだけあって、なかなか独特な感性を持っているようだ。


「配信はしていないでござるか?」


「はい。機材は高いので」


「あの……親は? 心配していないでござるか?」


「……はい」


 う、うん?

 ニコリと笑っているけれど、妙な間があったような。


 って、拙者、まだ配信していなかった。


「配信してもいいでござるか? 凶悪モンスターを探して倒すチャレンジをしているのでござるよ」


「はい、どうぞ」


 ドローンを飛ばし、配信を開始する。

 バーチャルディスプレイを出現させると、ポツポツとコメントが流れ始めた。



:はじまた


:サユキちゃそ〜


:誰かいる


:隣の子だれ?


:かわいい



「あ、皆の者。この方は、えっと……」


 勝手に紹介して良いのだろうか。

 悩んでいると、こはる殿がドローンのカメラに向かってペコリと会釈をした。


「こんにちわ。こはると申します。12歳です」



:こはるちゃん


:12歳!?


:かわいい


:ロリやんけ


:小学生?



「ふふ、これでも中学生なんです。早生まれなので」



:いいね


:よろしくね


:かわいい


:無理しないでね


:安全第一で


:ファンになりました


:かわいい



 おや? おやおや?

 コメント欄がこはる殿の話題で持ち切り。

 拙者の配信なのに……。


「こはる殿は忍者が好きなのでござる!! 拙者の忍術を褒めてくれたでござる!!」



:こはるちゃんのスキルは?


:部活しているの?


:ダンジョンはククルだよね? 家はこのへん?


:かわいい



 だ、誰も拙者の話を聞いてない……。

 まさかこの配信、こはる殿に乗っ取られた!?






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※あとがき


白雲しらくもこはるちゃん、謎多き12歳。

レギュラーキャラにする予定です。


応援よろしくお願いちまちゅ♡♡

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