二章の術ッッ!! もっとワイワイ編
第11話 これからの目標
拙者は基本的にリリカ殿と共にダンジョンへ赴くので、リリカ殿が休むなら拙者も休みだ(機械に詳しいリリカ殿がいないと不安なので)。
こういう日はじっとリリカ殿の家で待機し、炊事洗濯お掃除と、家臣としての役目に従事する。
「ただいま〜」
あ、リリカ殿が学校から帰ってきた。
早歩きで玄関へ急ぐ。
「おかえりでござる〜!!」
「んなお出迎えなんてせんでええよ。犬やあるまいし」
「わんわん!! でござる」
「あ、化けゴリラか」
「ウホウホ!! ってなにやらせるでござるか!! 拙者は化けゴリラじゃないでござる!!」
「ははは」
わ、笑ってごまかされた……。
「もう、夕飯できてるでござるよ。先に食べるでござるか?」
「いや、風呂入るわ」
拙者は山育ちだが、定期的に町に降りては食材を調達し、調理していた。
なので油物も洋食もバッチリだ。
忍者たるもの、ありとあらゆる料理に精通していなければならないので!!
「ふぅ〜、さっぱりした〜。お、ハンバーグやん。ええな」
「食べるでござる!!」
顔を突き合わせ、ふたりでもぐもぐとハンバーグを食す。
なんだか家族ができたみたいで嬉しい。
「そういえばリリカ殿、拙者のチャンネル登録者数はどうなっているでござるか?」
「んー? いいかげん自分で確認できるようになりーや。今日は3人減ったで。24万8526人や」
「減ったでござるか!? 最近増えないなーと思っていたら、減ったあ!?」
「掲示板ではまだ話題がつきへんけど。誰かさんが書き込んだせいで」
誰のことでござろうかねえ。
と、リリカ殿がスマホの画面を見せてくれた。
いろんな人が書き込める、掲示板サイトというものだ。
「ダンジョン配信者スレや」
:838
結局サユキちゃんはどうやってレベル999にしたの?
:839
いまごろリリにゃんと晩御飯食べてるのかなあ
:840
全部企業が裏で手を引いてる説ってどうなった?
:841
サユシコとリリシコ、どっちにするか迷うねぇ〜♥♠
:842
本人が配信に対して素人すぎるのがキツいよな
:843
おーいサユキ見てるかーっ!!
「拙者、あんまりここ好きじゃないでござる。みんな好き勝手書き込んで」
「しょせんは便所の落書きみたいなもんやけど、参考になる意見もあるで。例えば、『ぶっちゃけコンテンツとしてつまらん』とか」
「???」
「つまり、敵を瞬殺しまくってて面白みに欠けるってことや」
「な、なんですとお!?」
敵なのだから、さっさと倒した方がいいのでは?
なにがいけないのか。
「ダンジョン配信の視聴者はな、危険なトラップ、強いモンスターに苦戦しながらもどうにか攻略する様に興奮するんや。サユキみたいに無双するのも悪くはないんやけど、すぐに飽きられてまう」
「な、なるほど」
「他にもダンジョンならではの動画もある。例えば、ほら」
今度は別の画面を見せてくれた。
人気のダンジョン配信者のチャンネルらしい。
おぉ、いろいろある。
「この人なんかはダンジョン攻略じゃなく、モンスターの生態を観察する動画を上げとるやろ? 肝心なのは『ハラハラ』とか『癒やし』『新しさ』やねん」
「うーん、拙者もなにかを観察配信したいでござる」
「ま、サユキの生態を観察する配信はとっくにしとるんやけど」
「え、拙者の生態を配信?」
「ふふふ、しとるで。実は小型のカメラがあるんや、この部屋。サユキの日常が常に生配信されとるで」
「じゃ、じゃあ拙者がベランダで全裸になって忍者式準備体操をしていたのも、配信されていたでござるか!?」
「あんたそんなことしとったん!?」
「忍界に伝わる健康法でござる!! うぅ、誰にも見られてないと思っていたのに……」
「ここ5階やで!? 普通に外から丸見えやアホ!!」
「忍界の秘伝健康法が世間の皆様に晒されてしまったでござるかあ……」
「もっと恥ずかしいとこが晒されとんねん!! って、嘘や嘘。冗談や!!」
な、なんだ冗談か。
よかったあ。
まったく、リリカ殿は意地悪でござる。
「いろんなダンジョンに行くくらいしか、思い浮かばないでござるよ」
「となると……都市伝説に挑んでみる?」
「都市伝説?」
「凶悪モンスターっておるやろ? そのダンジョンに似つかわしくない、高レベルモンスターや。最初に戦ったオークがレベル40で、先日のスライムがレベル80なんや」
「倍でござるな」
「凶悪モンスターは、出会った回数でレベルが変動するんや。2回目なら倍、3回はさらに倍。どこのダンジョンだろうが、どんな種族のモンスターだろうが、遭遇するたびに強くなる。どういう仕組みか知らんけど」
「倍、さらに倍……。じゃあ、5回目でレベル640」
「けど6回目になるとレベル999で、7回目からはレベル1000になると言われとるんや。そして、7回凶悪モンスターを倒すと、特別なアイテムがドロップし、ダンジョンの女神に願いを叶えてもらえる、って都市伝説があるんや」
「それに挑戦するのでござるな!!」
「言うて都市伝説やから、信憑性は薄い。そもそも凶悪モンスターの出現率は5%や。けど、最強なサユキにピッタリな目標やろ」
「うむ!! その途中で登録者100万人を突破し、忍を志す者が増えるのもよし、願いを叶えて忍界を栄えさせてもらうのもよし、でござるな」
「そういうことや。凶悪モンスターはどんな配信者も避けてるコンテンツやから、挑戦するだけでウケると思うで。とはいえ、稀にしか遭遇せんから、会えるまでは普通にダンジョン攻略してコツコツ登録者増やしてこ」
「はいでござる!! うっほほーい!! 拙者、頑張るでござるーっ!!」
「なんやうっほほーいって、ゴリラに引っ張られすぎやろ。心までゴリラになりつつあるやん」
「だから拙者は人間でウホ!! あっ」
「ホ、ホンマにゴリラになってもうた……」
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※あとがき
なんのモンスターが凶悪化して出現するかは、完全ランダムです。
複数人で行動している場合、一番遭遇回数が多い人間に合わせてレベルが変化します。
新章ってことで、キャラを増やしたり活動の幅を広げたりしたいなあ。
みなさまの応援次第ですっ!!
応援よろしくお願いしまちゅ。
お願いしまちゅッッ!!
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