第9話 たぶん百合回

 黒忍術を倒したあとも、拙者たちはサルタを進んでいた。

 せっかくだからこのまま幻のアイテムを探しちゃおう、ということらしい。


 前回、ドラゴンを倒した地点までワープして、さらに地下へ降りる。


 相変わらず、篝火が先を照らすだけの洞窟である。

 景色が変わらないのは精神的に辛い。


「いま、私らは地下9階におるんよ。このままもいっちょ降りればボスのエリアで、スキル経験値爆上げアイテムが手に入ってダンジョンクリアなわけや」


「けいけんち? けいけさんの家でござるか?」


「……カンストしとるサユキには関係ないか、経験値」


「???」


「でも私らの目的はダンジョンクリアやなくて、この9階で極稀に飛び出す凶悪スライムや。『凶悪』やからレベルも高い。けどそいつを倒せば、幻の回復アイテムが手に入るっちゅーわけやな」


「ほえー。でもリリカ殿、回復なら拙者の魔法があるでござる。ヒール? を使えば全回復だって、バーチャルディスプレイに書いてあったでござる」


「んまそうやねんけども、肝心なのは『手に入れる』ことやから」


「なるほど」



:初見です


:凶悪モンスターの出現確率は5%だよ


:がんばえー


:うおおおおお


:サユキなら秒殺だろ


:黒い忍者倒したってマジ?


:初見です


:コメントはやすぎ



 おお? なんだがコメントの流れが異常に早い気がする。

 初見、というのは初めて拙者を見た、ということか?


「リ、リリカ殿、いっぱい見てるでござる!!」


「おー!! 同時視聴人数10万人か、こりゃすごいやん。犯罪者倒しただけのことはあるで」


「登録者も……30万人になってるでござる!!」


「こりゃ案外、100万人はすぐかも知れへんな」


 いま、10万人が拙者に注目している。

 ここで忍術を披露すれば、きっと何人かは忍者に興味を持ってくれるのでは?


「ふふふ、それもこれもリリカ殿のおかげでござるな」


「んな別に私は」


「リリカ殿のおかげでござるよ。リリカ殿を守りたいから、グッと気合が入ったでござるもん」


「……あっそう」



:リリカにゃん顔赤い


:てえてえ


:てぇてぇなあ


:照れてる?



「いつか、リリカ殿には大きな恩返しがしたいでござる。リリカ殿は、拙者の主君でござるから」


「主君て、大げさな」


「主君でござるよ。拙者を拾ってくれて、衣食住を用意してくれて、いろいろ教えてくれて。拙者、リリカ殿のためならなんでもするでござる!!」


「いらへんてそんなの。てか、主君やないって」


「じゃあ、なんでござるか? 拙者たちは」


「え……と、ともだち?」


「おお!! 友達!! 拙者、友達なんて初めてでござる!! リリカ殿は拙者の初めての友達でござるか!! 嬉しいでござる!!」


「……ほんま、恥ずいことをデカデカと」



:めちゃくちゃ照れてる


:てぇてぇなあ


:耳まで赤いよリリにゃん


:リリサユきたああああ



「リリカ殿は拙者にたくさんのはじめてをくれるでござるな」


「あんたが時代錯誤人間なだけや」


「拙者、役目を果たし、無事に忍界が賑わっても、リリカ殿に仕えるでござるよ!!」


「もう!! 恥ずいこと連発すんのやめーや!!」


「あっ!! あそこ、天井から何かが落ちたでござる!!」


「急に流れが変わるやん」


 雫が溢れるように、ボトッと液体が落ちた。

 真っ赤でブヨブヨした、気味の悪い妖怪。


「あれや!! 凶悪スライム!! サユキ!!」


「任せるでござる!! バーニングフレイム!!」


 魔法陣から業火が放射される。

 最上級の火属性魔法だ。

 たとえ相手が凶悪妖怪でも、一瞬にして消し炭にできる。


 ていうか、一瞬で消し炭にした。



:さすサユ


:さすサユ


:凶悪モンスターって本来、負け確イベントみたいなものなんだけどなー


:サルタにはもう敵はいない


:さすサユ



 凶悪スライムを倒すと、またも天井から何かが落ちてきた。

 緑の液体が入った小瓶。あれが回復アイテムなのだろう。


 リリカ殿が小瓶を拾う。


「おーし、ありがとサユキ」


「なんの、拙者は大好きなリリカ殿に仕える忍者でござるから」


「もう、いいってそういうのは……」


 リリカ殿、凶悪スライムより顔が真っ赤になっている。

 拙者、なにかしたかなあ?





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※あとがき

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