第5話 スーパー忍術バトル!!

 相手は2人。

 されど問題なし。


 拙者、森で凶暴なサル軍団を一網打尽にした経験があるから。


 筋肉質な男たちの、色黒の方が吠えた。


「先手必勝!! 緊縛スキル!!」


 別の縄が現れて、拙者を襲う。

 なるほど、あの縄自体、スキルによって具現化したものか。

 あれでリリカ殿は縛られて、身動きを封じられてしまった。


「なんの」


 自動で追ってくる縄を回避する。

 と、金髪の方がニヤついた。


「甘いぜ!! 風魔法スキル!! 突風!!」


「なぬ!?」


 魔法が出現し、拙者に向けて強風を放った。

 突然の出来事に、思わず動きが止まってしまう。


「かかった!!」


 その隙を突かれ、拙者の全身に縄が巻き付いてしまった。



:やばい


:魔法使え


:だから逃げろと


:通報したぞ



 色黒が笑った。


「可愛い子ちゃんたち2匹もゲットできるなんて、ついてるぜ」


 ふ、不覚。


「サユキ、大丈夫なん?」


「安心するでござるリリカ殿。忍法、変わり身の術!!」


「おぉ!!」


「は、まだできないから……忍法、縄抜けの術!!」


「お、おぉ!!」


「も、まだできないでござる」


「あんたよくそれで忍者自称しとるな!!」


 くっそー、未知の能力『スキル』を相手にするのは、なかなか骨が折れる。

 しかし、この程度でやられる拙者ではない。


 いまこそ、最終奥義を使うとき。


「見せてやるでござる。13年の修業によって会得した、究極の忍法を!! うおおおおお!!!!」


 拙者の気迫に、男たちがたじろぐ。


「いまさらなにしても無駄だぜ!!」


「お、おとなしく俺たちと遊んでいれば良いんだよ!!」


 拙者、まだまだ授業中の身。

 異性と遊ぶなど、言語道断なのだ。


「忍法・筋肉ムキムキの術ッッ!!」


「「なに!?」」


「は〜〜、はああああッッ!!!!」


 ブチブチブチ、と力で縄を引きちぎる。

 これぞ最終奥義。

 全身のチャクラを活性化させて、パワーアップする忍術である!!


 心なしか、チャクラが全身から溢れている気がする。


「ふっふっふっ、どうでござるか? 拙者のパワーッは」


「「ば、化けゴリラだああッッ!!」」


「だ、だれが化けゴリラでござるか!!」


 ゴリラよりムキムキになってるのに。


「あ、相棒、たしか13年前、動物園で亡くなった可哀想な赤ちゃんゴリラがいたよな」


「も、もし生きていたら13歳。そ、そしてこいつも、13歳!!」


「じょ、成仏してくれぇぇい!!」


 拙者は人間だって!!


「失礼な連中でござる!! くらえ必殺、忍法・花粉爆弾の術!!」


 手のひらサイズのくす玉を投げつける。

 くす玉は彼らの側で爆発すると、黄色い粉を撒き散らした。


「ハクシュッ!! ハクシュッ!!」


「な、なんだこりゃあ!! 目が痛え!!」


 杉の木の花粉を集めて作ったくす玉。

 くらえば一瞬にして花粉症になり、苦しみ続ける地獄の兵器だ!!


「ひえ〜!! 化けゴリラの呪いだ〜!!」


 男たちが去っていった。

 ふふふ、やった。忍術で倒した!!


「どうでござるかリリカ殿!! 拙者の忍術は!!」


「くしゅん、くしゅん、ちょ、ちょっと!! なんてもの破裂させんねん!!」


「あれれ!? まさかリリカ殿も花粉症になってしまったでござったか!?」


「元から花粉症や!!」


 うぬぬ〜、これは予想外。

 ついやりすぎてしまった。


 とはいえ、忍術の恐ろしさを視聴者にアピールできたはず。

 さっそくコメントを確認しよう。



:なんつーか、地味


:魔法使った方がはやくね?


:でた舐めプ


:化けゴリラだったんかい


:あの、魔法でよかったと思います


:舐めプ化けゴリラだったんかい


:ド派手な技で倒してほしかったなー



 ええええぇぇぇぇ!!!???!?!?

 み、みんな何を見ていたの!?


 拙者、縄を引きちぎったのに。

 花粉爆弾を炸裂させたのに。


 ハリウッドもビックリのスーパーアクションをお見せしたのにッッ!!


 ま、まさかみんな、摩訶不思議な能力『スキル』に慣れすぎて、怪力になった程度じゃ驚かない!?


「うえーん!! 拙者、舐めプなんてしてないでござるよーーっ!!」


 リリカ殿の花粉症が収まらないので、結局拙者たちは家に帰ることにした。

 拙者、もう心がくじけそう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る