第3話 ダンジョンリベンジ

 校門の前で学業を終えたリリカ殿と合流し、昨日のダンジョンへリベンジすることにした。

 昨日は少ししか進んでいなかったから、今日こそは拙者のスーパー忍術でクリアしてやるのだ。


「これから行くダンジョンの名前は『サルタ』。凶悪モンスター以外は弱いし、数も少ない、初心者用のダンジョンやで」


「そんなとこを、なんでリリカ殿は攻略していたでござるか?」


「レアな回復アイテムが眠っているんやけど、どこにあるのかわからんのや」


「アイテムってなんでござるか?」


「……そのうち説明するわ」


 プレハブ小屋で受付を済ませて、神殿でダンジョンへワープする。


 篝火に照らされた洞窟内で、拙者はさっそくドローンなる機械を飛ばし、配信を開始した。



:はじまた


:きた


:魔法スキルみせて


:きた


:ホーリースパークがあの威力になるなら、エクスプロージョンはどうなるか知りたい


:かわいい



 お〜、さっそくコメントが流れてきている。

 視聴者数は……1万人!!

 1万人も拙者に注目しているということ!?


 なんという数。軽く戦ができるくらいの人数。


「お〜、新人がいきなり1万はどえらい人数やね。登録者も同じくらいやん」


「これも、有名配信者のリリカ殿が宣伝してくれたおかげでござる!!」


「んじゃ、さっそく行こか、サユキ」


「はいでござる!!」


 てな具合に歩いていると、


「リリカ殿!! なんでござるかあの妖怪は!!」


 全身から触手が生えた、気味の悪い怪物が現れた。


「モルボールやね〜。あの触手に捕まらんように気をつけて」


「了解でござる。さっそく自慢の忍法を披露するでござるよ!! 忍法・火遁手裏剣の術!!」


 燃え盛る手裏剣の連投する拙者の必殺技!!

 これで忍術学園の屋根裏にいるネズミをたくさん倒したのだ!!


「ていていてい!!」


 くっ、あの触手にすべて弾かれる!!

 昨日の豚の妖怪しかり、どうして拙者の手裏剣を簡単に防げるのか。


「ていていてい!! ていていてい!!」



:なにしてんの?


:まじめにやれ


:なんか投げてる


:ふわふわ投げるな


:もっと肩鍛えろ


:肩が弱い



 ひぃ〜!! 全力で投げてるのに!!


「サユキ下がってて、私のスキルを見せたるわ」


「リリカ殿の?」


「スキル……発動!!」


 お、おお!?

 リリカ殿の体が光りだした。

 猫のような耳と、これまた猫のような尻尾が生えて、こころなしか爪が鋭利になっている。

 まるで、猫人間!!

 こ、これはいったい!?


「猫化完了だにゃん!!」


「ね、猫化!?」


「猫の力を狩りた猫人間になれるのにゃ」



:かわいい


:リリカにゃんきた!!


:かわいい


:かわいい


:すき


:にゃーん



 コメントも盛り上がっている!!


「いっくにゃ〜!! 猫パンチ!!」


 リリカ殿の必殺パンチが炸裂。

 って、ああああ!!

 呆気なく捕まったああああ!!


「て、てへへにゃん」



:かわいい


:かわいいからへーき


:だいじょうぶ?


:かわいい


:がんばれー



 こ、こいつらなんとまあ他人事!!

 ま、ま、まさかリリカ殿が有名なのは強いからではなく……。


「サ、サユキ助けてにゃー」


 単に猫状態が可愛いからああ!?


「いま助けるでござる!! くらえ最強必殺忍法・爆竹の術!!」


 お手性の爆竹を投げつける。

 これで森のたくさんのクマを退けてきたのだ!!


「うわ、うるさいにゃん。サユキ、ただうるさいだけにゃんよ」


「なぬ!? 触手の妖怪め、なぜ驚かない!!」



:遊んでんじゃねえ


:火遊び覚えた小学6年生かよ


:マジメに戦え


:はよ魔法使わんかい


:僕はすき


:舐めプすな!!



「な、なめぷ? リリカ殿、舐めプとは?」


「手加減して遊んどるってことにゃん」


「全力でやってるでござるよちくしょおおおおおお!!」


「サユキ〜、はよたすけてにゃ〜」


「うぐぐ……こ、こうなったらやってやるでござるよ!!」


 手をかざし、半透明の板(バーチャルディスプレイというらしい)を出す。

 えーっとなになに〜、どんな魔法があるのかな〜。


「よし、喰らえ!! マルチロックエアロカッター!!」


 妖怪の周囲に複数の魔法陣が出現し、そこから風の刃がそれぞれ連続して放たれる。

 拙者の手裏剣より遥かに殺傷力の高い風の刃が、妖怪の触手を次々と切り落とす。


 リリカ殿を縛る触手も切られ、解放された。


「ふう、助かったにゃん」


「このままハゲにしてやるでござる」


 が、妖怪の触手は切られると同時に再生されていく。

 これでは埒が明かない。


「わわ!! サユキ!! また私を捕まえようとしとるにゃん、あいつ!!」


「ならば……アイスブリザード!!」


 絶対零度の吹雪が吹き、妖怪を凍らせる。

 完全に動きを封じた上で、


「エクスプロージョン!! 火力弱め!!」


 妖怪を爆殺した。

 一応、念のため爆発の威力を抑えておいてよかった。

 たぶん、全力ならこの洞窟は崩れていたに違いない。


 それでも、妖怪は完膚なきまでに粉々に吹き飛んだから、再生は不可能だ。


「ふぅ」



:おおおおお!!!!


:これがレベル999の力!!


:ふつー何種類もの魔法を連続して使えねーぞ


:マルチエアロカッターってなに!? 全方位から連射できるってなに!?


:魔法の天才


:火力弱めであれ!? 俺もエクスプロージョン使えるけど、ぶっちゃけさっきの爆竹と大差ねーぞ


:たんぱつのエアロカッター自体、風魔法レベル50で覚える高難易度魔法だったんだけどなあ


:俺、10年かけても氷属性魔法のレベル45なんだけど……。




 みんな盛り上がっている……。

 魔法で盛り上がっている……。

 忍術のときは辛口コメントばかりだったのに……。


 確かに、魔法は拙者の忍術より遥かに凄まじいパワーがあるようだ。

 し、しかし。

 しかし!!


「こんなのってあんまりでござるよーーっ!!」




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※あとがき

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