神奈川そして…

 そして俺達は相模原に着いた。まだ富士山は俺達を見下ろしている。次第に今回はしっかりと金色の仏像が見えてきた。しかもすぐ近くとまでは行かないが、見える範囲に横浜と川崎のだと思われる仏像も見えた。


「なんか3つの仏像が一つの場所にいる感じがする…」


「ハハハ!都合が良いではないか。3つ一気に滅してしまおう!」


鬼神が豪快に笑いながらそういった。


「どうやってやるんだ?」


「小僧。お前は我とアマテラスのミカドの二人の力を同時に使ったことはないだろう。しかし、お前はもう神同然の力を持っている。我ら二人の力をも同時に使いこなすことができるだろう。 行曹ぎょうそうとの戦いの前に試してみようではないか!」


「わかった」


「よし、小僧。行くぞ!」


 すると鬼神と天照大神が俺の体の中に入ってきた。二人とも一緒に入ってくると体がとても熱くなって、鬼神と同化した時と同じような激痛が体を走った。そうしてしばらく、激痛に侵された後、頭の中で声が響いた。


「鬼神、今まさに天岩戸を開く。天照大神を祭りで誘い、現世へと降り立たせる。この乱世において神の力は絶対なり。さあ我らが使命いざ謳わなん」


これは鬼神でも、天照大神の声でもない。


しばらくして痛みが引くと、俺はなんとも言えない高揚感に満ちていた。


「あの声は何だったんだ?」


「あれは別天津神ことあまつかみじゃろうな。妾や鬼神…国之常立神の前に生まれた、倭国を創造した神たちだろう」


「ハハハ!あいつらはこの現世へ降りようとしないからのう。よほど牽牛の食事と織女の服が心地よいのだろう。 我らを高みの見物している」


「そうか。天界の神々たちか…よし!行くぞ!」


俺は空へと飛び上がり、こう宣言した。


「俺は火神徹。『覚醒者』と行曹を滅して日本に…世界に平和をもたらす復讐の神!いざ参らん!」


 そして俺は鬼神の棍棒と天照大神の光の剣を両手に持ち、空を駆け回った。『覚醒者』はなにか危機感を感じたのか、始めのときのように大量に光線を四方八方に打ったが、天照大神の加護のお陰で全く俺には効かなかった。


 俺は一瞬で仏像たちの中心に駆け寄ると、鬼神の力を使って3つの仏像を一箇所に集めた。鬼神の創造の力は前よりも大きくなっており、自分の力ではないようだった。そして、仏像の瞼を切り裂いて周りの荒廃した地形をその目に焼き付けさせる。


「お前は殺生を行った。破門だ。 地獄道へ落ちろ」


するといつも通りに仏像の断末魔が聞こえ、崩れ去っていった。


「ハハハ!我らに敵うものはない!」


「これが…俺たちの力か…」


「そうじゃ。お主はもう立派な神じゃ」


 天照大神と、鬼神が俺の体の中から出てきてそういった。二人が体から出ると、とてもひどい疲れに襲われ、そのまま神奈川のど真ん中で倒れてしまった。

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