蝦夷地

「着いた〜」


 俺は鬼神に約2日間ずっと乗り、やっとの思いで北海道に着いた。今日は2月7日。まだまだ冬本番の北海道は雪化粧をしていた。札幌に着くと異様なほどに美しい雪景色が広がっていた。どこを見ても一面真っ白の雪景色。銀世界だ。これは勾玉のオーラがないと寒さで凍え死んでしまう。


「北海道か。 お母さんと旅行に来ようと言っていたなぁ」


俺はお母さんをふと思い出してしまった。


「小僧。お前は一人ではない。我がいるではないか。さぁ。北加伊道?とか言ったか?の仏像を滅ぼそうではないか」


「そうだな」


俺は天照大神の力を使い、光の剣を作り出した。すると今回は鬼神が精神体として俺の体を操り、いつの間にか仏像を破壊していた。こんなにも戦闘シーンが短くても良いのかと言うほどあっけなかった。


「お前は殺生を行った。破門だ。 地獄道へ落ちろ」


またもや木の仏像が落ちてきた。


「なんかあっけなかったな。北海道まで2日間かけてきた意味とは…」


「ハハハ!我らが強くなりすぎただけのこと。『覚醒者』は人を減らしたおかげで極楽浄土を信じるものが減り、これ以上強くなれなかったのであろう。 今、力の封印を解いた神世七代が独神、国之常立神くにのとこたちのかみだ! 大和広しといえども我に叶うものはいない!」


鬼神はそう言いながら高らかに笑った。


「次は仙台だ」


「さあ行こう!」


 気が早いが、特に何もなかったのでそのまま仙台へと向かった。札幌から仙台まで約800キロメートル。約12時間の道のりだ。俺は筋斗雲に乗るのは諦め、龍の姿となった鬼神の背中に乗って移動した。かれこれ48時間以上乗っているため慣れてしまい鬼神の背中でいつの間にか眠ってしまっていた。あとから聞いた話だが、鬼神の想像の力で『如意宝珠』を作り出し、俺を中に入れて運んでくれたらしい。


「東北。我が封印されていた地獄の地」


また鬼神は節分のときのように怯えていた。


「大丈夫だ。鬼神。俺も、天照大神もいる」


「そうじゃ話妾もいる。お主はもう封印されることはない」


「そうか。アマテラスのミカドも付いている。我が恐れるものはなにもない!」


 そこから仙台、新潟と3日間かけて『覚醒者』を滅することが出来た。どちらも雪が多かった。もしかしたら『覚醒者』のおかげで地球温暖化が進行しなくなり、地球の環境が良くなったのかもしれない。工場は壊れ、発電はしなくなり森林伐採も採掘もなにもできなくなった。家畜たちは自由に動きまわり、過放牧ということもなくなった。行われているのは各地の避難シェルターで生きるために必要な機械を使わない小規模な農業と、かすかに簡易発電機での発電や昔ながらの水車を用いた水力発電だけだ。


「皮肉にもこの地球の環境は矯正されてしまったんだなぁ」


名古屋へと向かいながら俺はそんなことを思ってしまった。

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