次の目的地へ

「あと覚醒者がいるのは…」


俺はメモ帳を取り出した。


「名古屋市、横浜市、札幌市、川崎市、仙台市、千葉市、さいたま市、静岡市、新潟市、浜松市、相模原市か。どこから行こう。そのまま来た道をたどって名古屋から行くか? 順当だと、名古屋、浜松、静岡、相模原、横浜、川崎、千葉、さいたま、で、行曹ぎょうそうがいるはずの東京、渋谷…かな。 でもなるべく東京に行く前に他の『覚醒者』を倒したいから… 札幌、仙台、新潟、名古屋と行くか」


「そうだな。行曹とはサシで戦わないと負ける」


鬼神おにがみは真剣に重い口調で言った。


「じゃあ、さいたままで行ってから札幌に行くのも大変だから、先に札幌に行く感じで行こう」


「札幌とはどこじゃ?」


 天照大神が不思議そうに聞いた。まあ、当たり前である。北海道…蝦夷地はもともと倭人ではなく、アイヌの土地だ。


「東北、陸奥の北にある本州についで大きい島だ。江戸時代から倭人が進出した場所だ」


「そんな場所ができたのか。妾の知らないことが約1800年の間にあったのだな」


「ハハハ! 時の流れとは恐ろしいものよ。さあ、小僧。この九州から、北の大地、北海道へ行くぞ!」


 そうして俺達は北海道へと旅立った。距離は直線にして約1700キロメートル。本当に馬鹿げている。筋斗雲がなければ到底到達できない。といっても、筋斗雲も時速50キロメートルくらいしか出ないので約34時間。まるまる2日間かけて行く予定だ。

高度は約1000メートルくらいに上昇し、北へと向かっていった。下界の方にはひとけがなくなり、青々と茂っている木々が見える。あの悲劇の日から10年…ここまでも世界は変わってしまった。途中、中国山地を通過するとき、また高度を上げた。

今日は2月5日。だいぶ寒い。俺が少しこわばっていると


「ほら。お主、あの勾玉を握れ」


 と天照大神に言われた。天照大神からもらった勾玉を握ると、体を温かいオーラが纏い、寒さや苦しさなどがすべてなくなった。


「これなら冬の北海道でも大丈夫そう」


「じゃあ、風に乗るためにもう少し高度を上げるか」


 そう龍の姿をしている鬼神が意地悪そうに言った。そうすると鬼神はぐんぐんと上昇していき、雲の上にまで出た。太陽が眩しい。


「きれいだ」


「そうじゃろ。妾はこの世で一番美しいものだ」


天照大神が誇らしげに言った。確かに太陽はこの世の源。太陽がなければ生物は生きていけない。もう少し高度を上げていくと、筋斗雲がパッと消えてしまった。そのまま俺は自由落下する。


「ウワァァァァァァァ!」


「全く何をしているんだ」


鬼神がすぐに俺を乗せてくれた。


「筋斗雲には高度が高すぎたんじゃろう。しばらく我の背に乗っておれ」


俺は驚きすぎて声が出なかった。


「筋斗雲…き、え、た… 周りの雲に吸い込まれた?」


するとまたもや突風が吹いた。


「うわっ もう俺、雲の上嫌いかもしれない」


「小僧。何を言っているんだ。 龍の背中に乗って移動しているんだぞ。この上ない幸福でないか。 ハハハ!」


たしかにそうかも知れないが、鬼神は本当に楽観的すぎる。


「さあ行こう!北の大地へ!」


 俺は龍の姿の鬼神に乗って冬の西風に背中を押され、とても速い速度で北へと向かっていった。

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