熊本へ

「ママ。 だぁいすき」


「徹。ママも徹のことが大好きよ」


◇◆◇


「ママ…」


俺は翌日、温かい布団の上で目覚めた。見慣れない天井に俺は瞬時に覚醒した。


「夢…か」


俺は昔のまだ『覚醒者』が現れる前の公園で、母と遊んでいる夢を見ていた。太陽の光に包まれて、とても暖かい。優しい夢だった


「小僧。ようやく起きたか」


「鬼神」


「じゃあ小僧も起きたことだし、そろそろ行くかのう。次はどこだ?」


「すぐ近くの熊本…肥後国だ」


「では行くか」


 そうして俺たちは約110キロメーロルを2時間かけて移動した。俺はもちろん天照大神を体に宿し、筋斗雲に乗って、鬼神は金色の龍の姿になって。


 途中に空から見下ろすと、臨時シェルターの人が見えた。その人達は福岡の仏像が居なくなったと喜んでいるようだった。特に子どもたちは元気に外で遊んでいた。

それを見るとなんだか嬉しくなって、自分がしている復讐は自分のエゴのためだけではないと感じることができ、頑張ろうと思えた。


「なぁ、鬼神。まだ人間が嫌いか? あんなにも頑張って生きているよ」


「もとより倭国は我らが作った国。 こうしてみてみると案外人間も悪いものではないな。 小僧はもうほぼ神の領域に達して居るから例外だ」


「俺が神か… なんか信じられないな」


「スサノオも然り。神武も然り。超人的な信じられない力を持つものは神であることが多い。 つまり、我とアマテラスのミカドの力を扱える小僧はもう神であると言っても過言ではない」


「過言過ぎないか?」


「ハハハ! 神は信じられればどうとでもなることができる。 あそこに居る人間たちに平和が訪れ、それが誰の仕業かわからなければ象徴としての神や英雄を作って信じ、敬うだろう。 そうであったならもうお前は神なのだ」


 そうこうしているうちに熊本についた。壊れかけた熊本城の上に仏像が浮いている。


「今回は我の力を見せようではないか。我は国之常立神。本来の力を取り戻した姿!」


すると、龍の姿だった鬼神が、人の姿となり


「見ておれ。 これが神世七代が独神、国之常立神だ。」


「国之常立神は人型になるともう、お主の体を拠り所としなくても良くなったのだな。見ろ。実体を持っておるぞ。」


 そう天照大神が行った瞬間、空に光が弾けた。一瞬で仏像が粉々に砕け散った。

そして何やら精神体のようなものを捕まえてきた。


「ハハハ! どうだ行曹よ。『覚醒者』を捕らえたぞ!」


よく見てみると何やらその精神体は鬼神から逃げ出そうとしている。


「拠り所としての仏像がなければなにもすることができまい。 お前。 よくこの光景を目に焼き付けろ。 極楽なんぞありゃしないぞ。 そこにあるのはただの現実だ。 よく覚えておけ。『覚醒者』。お前はただの行曹や、その他信者たちの想いの塊でしかないが、覚えておけ。 この世には極楽など存在しない。全ては生きるか死ぬかだ。 来世なんぞあってないようなものだ。 小僧、トドメだ」


「お前は殺生を行った。破門だ。 地獄道へ落ちろ」


すると『覚醒者』の精神体自体がボロボロと崩れていき、消え散った。


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