風神雷神

神戸から先の『覚醒者』討伐は順調に行った。

ほとんどの時間が移動に費やされ、民家を転々としていった。

神戸の『覚醒者』は全然余裕で倒すことができた。

なんだか鬼神おにがみが俺の体を操るのに慣れてきたようだ。

そこからはそのまま西日本を制覇していった。

神戸市、広島市、岡山市…


しかし九州に渡るのに問題があった。


「おい。これどうやって渡るんだ?」


「簡単じゃろ? こんな下関、一瞬だ。」


「えっ?」


「自分が飛んでいる想像をしろ!」


「わかった。」


鬼の力で空を飛ぶ、空を飛ぶと言ったら…

雲だ!

俺は鬼らしく、風神雷神のあの金屏風、確か狩野永徳が作ったあれを想像した。


「お前も我の力を使うのがうまくなったな。」


力を込めてゆっくり前を見るとそこには雲があった。

それは 空に浮かんでいる雲と遜色ないくらいふわふわした感じの本当の雲だった。

そして空には風神と雷神らしき、鬼神と似た姿の雲に乗った鬼?神がいた。


「風神雷神、久しいのう。いつぶりだ?」


「お前がなにかの気まぐれか、東大寺を攻撃してきた時以来だ。」


「そうか。お前らは千手観音の眷属だったな。 まああれはなにか強い力を感じたから向かってってみただけじゃ。 いつだったかのう。」


「奈良の半ばくらいだ。」


「ワハハハ。もうそんなに昔か。 ところでお前さんたちはなぜここにいるんだ?ただ我の能力を使って九州とやらへ行こうと思ってのう。」


「俺達は大宰府にいる菅原道真公から様子を見てきてくれと言われたのだ。」


「ああそうかい。菅原道真か。同じ藤原一族にしてやられた者同士気が合いそうだのう。」


天神様てんじんさま(菅原道真)もそう言っておられた。」


「よし。小僧。早く九州とやらに渡ってしまおうでないか。」


「おう。」


「待て。お前からは天照大神の力が感じられるな。 もしかしたら太宰府へ行ったらあの力を得ることができるかもしれない。」


「あの力?」


「まあいい。小僧。まずは『覚醒者』を討つのが先だ。 この雲…筋斗雲に乗っていくぞ!」


そして俺はイメージして作った雲、筋斗雲に乗って北九州へ移動した。

後ろから風神雷神が着いてくるのはとても変な感じがした。

伝説の神様が2人、いや、鬼神も入れて3人の神様が付いてきている。なんだかとても心強かった。


そうして俺達は北九州に一瞬で着いた。

またあの嫌な仏像が空中に浮かんでいる。


「よし。今回も行きますか。」


「待て。ここは俺達にやらせてくれ。確かに俺達はあいつを破門させることはできない。だが、この雷と風の力であいつを弱らせることはできる。 あまり効果はないかもしれないが、せめてものの仏教から折衝を行ったものを出してしまったことに対する贖罪をさせてくれ。」


そういって風神と雷神は仏像へ向かっていった。

雷神は雷太鼓を叩き、風神は風袋から突風を吹かせた。

するとたちまち仏像は壊れていき、頭だけになってしまった。


「すごい…」


「我が本気を出せばあんなもんじゃすまないわい。」


そうしてお決まりの言葉。


「お前は殺生を行った。 破門だ。地獄道へ落ちろ。」


そう言うと今度はバラバラになった仏像が出てきた。


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