天照の力

天照大神!? 卑弥呼が!?

俺は驚きすぎてなにも言うことができなかった。


「卑弥呼様。いいえ天照大神様。『覚醒者』を滅するため力をお貸しくださいませ。」


菅原道真が平然と続ける。


「よく妾が天照大神だとわかったな。そう。妾は天照大神、そして卑弥呼の名を持ち下界へ降り立ったもの。」


「私は菅原道真。只今は雷の神となっておりますが、天照大神様の子孫です。」


「雷の神か…なぜ妾がどこの馬の骨ともわからないような神に力を貸さなきゃ… 待て。お主は…」


「ハハハ! 久しいな。 アマテラスのミカド。」


「おや。その声は国之常立神くにのとこたちのみことかい? ありゃりゃ。丑寅の方角へ封印されてたんじゃなかったのかい?」


待て待て待て待て。卑弥呼が天照大神で、鬼神が国之常立神?

俺は全く理解が追いついていない。


「おいおい。いつの話をしているんだ。 丑寅の方での封印は邇芸速日命にぎはやひのみことが解いてくれたよ。 まあ、その後にも封印されたのだが、今はこうして小僧と同化した。」


「あぁ。しっかりとあやつはお主の封印を解くことができたのか…まあ国之常立神がいるとなったら話は変わってくるな。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ここで一回説明を入れます。


『古事記』では、別天津神ことあまつかみの次に現れた十二柱七代の神を神世七代かみよななよ(日本神話で天地開闢のとき生成した7代の神の総称)としていて、最初の二代は一柱で一代、その後は二柱で一代と数えて七代とされている。


国之常立神くにのとこたちのかみ

豊雲野神とよぐもぬのかみ

宇比地邇神うひぢにのかみ須比智邇神すひぢにのかみ

角杙神つぬぐいのかみ活杙神いくぐいのかみ

意富斗能地神おおとのぢのかみ大斗乃弁神おおとのべのかみ

淤母陀琉神おもだるのかみ阿夜訶志古泥神あやかしこねのかみ

伊邪那岐神いざなぎのかみ伊邪那美神いざなみのかみ

(左側が男神、右側が女神)


御存知の通り、天照大神は⑦の伊邪那岐神いざなぎのかみ)伊邪那美神いざなみのかみの娘。


そこで問題となっているのが、天照大神=卑弥呼。


これには諸説ありますので気になる方はインターネットで検索などをお願いします。


そして、ここで明かされているのは、鬼神=国之常立神くにのとこたちのかみ


これにもまた諸説ありまして、丑寅の方角(北東)に国之常立神くにのとこたちのかみ天探女あめのさぐめに「鬼」よばわりをされて封印されていたという説があります。


また、封印された鬼としての国之常立神くにのとこたちのかみは節分の『鬼は外福は内』の起源となっているという説もあります。


そして、東北には川原毛地獄という場所もあり、そこから封印されていた国之常立神くにのとこたちのかみ=地獄の神=閻魔大王様から力を与えられて復活した。


そして、邇芸速日命にぎはやひのみことは秋田と山形の県境にある鳥海山に天磐船に乗って降臨、さらにそこから唐松岳の頂上に“日の宮”を建て、天照大神から授けられた“十種の神宝”を収めたといわれています。


よって、邇芸速日命にぎはやひのみことは東北に降臨したため、封印されていた国之常立神くにのとこたちのかみの封印を解くことも可能だったと推測できる。


また邇芸速日命にぎはやひのみことは物部氏の祖神とされているので、鬼神は封印を解いてもらった恩返しとして物部守屋と共に聖徳太子と蘇我馬子と戦ったと推測できる。


そうして話は続く。



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「なぜ妾の力を借りに来たのじゃ?」


「アマテラスのミカドは寝ていたから知らなかったであろうが、『覚醒者』というものがこの倭国、いや世界をも滅ぼそうとしているのだ。」


「だからその『覚醒者』とやらを滅するために妾の力が必要だと。ううむ。というかお主、人間が嫌いではなかったか?」


「『覚醒者』は人間以上に嫌いだからな。『覚醒者』を滅ぼせるなら人間にだって手を貸してもいいわい。」


「そうか。」


「そして、コヤツはなんなんだい?」


「小僧のことか?」


天照大神は俺を指さした。


「俺は火神徹。『覚醒者』に母を殺された。 その復讐のために今旅をしている。」


「赤い目じゃな。それも覚悟と復讐が入り混じった残虐でと買った目をしている。 しかも妾の血が濃いな。」


天照大神はしばらく考え込んだ。


「よかろう。力を貸そうではないか。 そなたの未来は面白うじゃったからのう。国之常立神の力は使いこなせたのか?」


「想像する力はある程度は。」


「そうか。神世七代かみよななよのちからを扱える人間が他にもいたとは。お主の力を使いこなせたのは妾が知る限り、妾と我が弟、建速須佐之男命たけはやすさのおのみこと(スサノオ)だけじゃったのう。」


「閻魔大王様も我の力をお使いになったぞ。」


「そうか。では。日の神、天照大神と預言者、卑弥呼の力をお主とその未来に託そうではないか。 ほれ、道真。金印をお渡し。」


「はっ。」


「ここに天照大神、卑弥呼の名においてこの人間に加護をもたらす。」


金印がパアッとひかり、俺の額に押し付けられ、そのまま吸い込まれていった。

太陽がそのまま体の中に入いったようなそんな不思議な感覚だった。



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