大阪での戦い

もう太陽は高く昇り、空はとてもきれいに晴れていた。

泊まった民家から3時間くらい歩くとどんどん周りの光景が痛々しいものになってきた。大阪中心部だったと思われるところはやはり開けており、空には見慣れた禍々しい仏像が浮いていた。地面にはガラスやらコンクリートやらのとても細かい破片とも言えないような砂があり、京都の木の破片とは違い少し恐怖を感じた。


「落ち着け。」


そう自分に言い聞かせた。


「よし、じゃあ二回目の復讐?と行きますか。」


二回目なので鬼神おにがみの力の使い方、イメージはだいぶ慣れていた。

まず『覚醒者』の攻撃範囲外から仏像を地面に突き落とすイメージをし、地上戦に持ち込んでから鬼の金棒をイメージして作り出して戦う。

そうイメトレをした。

しかし予想していたよりも今回の『覚醒者』は大きな力を持っていると感じた。


「なんか京都のときよりも雰囲気が違わないか?」


「まあ難波なんばには寺院が多いからのう。」


「たしか日本で2番目に多かったはず。」


「『覚醒者』は行曹ぎょうそうの思いの化身だが、また極楽浄土へと行きたいと願う馬鹿な人々の思いでまた強くなる。だからここまで力が大きいのだろう。京都には伊勢神宮のあったし、神社の数が多かったから寺院に対抗していたが、ここ難波には神社がとても少ない。力が拮抗できていないからだろう。」


「人々の思いでも強くなるのか…大阪は人口が多いから。まあ、やることは変わらない。『覚醒者』を滅ぼすだけだ。」


「そうだ。絶対に勝てる。そう想像することが、信じることが一番大きな力を生み出す。まあ我の力がそう安安と『覚醒者』に負けることはない。」


「よし行くぞ。」


俺は京都のときと同じように手に力を込め、忌々しい宙に浮いている仏像を重力で地面に落とすイメージをした。そうするとやはり地面に大きな穴が空き、仏像が吸い込まれていった。

そうして仏像に向かって俺は金棒を手にし、瞼をめがけて力いっぱい振り下ろした。

しかし今回はヒビが入ったものの壊れはしなかった。


「くそ。やっぱり硬い。」


そうすると仏像が光りだした。


「小僧!逃げろ。」


「何なんだ!?」


一生懸命に仏像から離れて、行くとちょうど358秒後にあの日と同じようにひかり爆発した。


「小僧、やはり生身の人間では太刀打ちできないようだ。お前の体を使わせてもらうぞ。 そう簡単に我の拠り所を失ってしまっては困る。」


そう鬼神が頭の中で囁いたかと思うと、自分の魂がすっと抜けて自分を第三者視点から見ているような感覚になった。 自分の体は動いているのに、自分が体をコントロールできていない、そんな不思議な感覚だった。そして、俺の体は光線よりも速いスピードで駆け抜けて範囲外へと移動していた。


「やはり我のほうが戦い慣れているな。小僧、体をそのまま借りるぞ。 ハハハ!1000年ぶりに大暴れするかのう。」


そうすると鬼神に乗っ取られている俺の体はとてつもない速度で仏像へと向かっていき、一瞬にして仏像の瞼を破壊した。そして


「お前は破門だ。」


と鬼神が言ったがなにも起きなかった。


「我ではこいつを破門できない。とどめを刺せ。」


と、聞こえ自分の体の感覚が戻った。


「お前は殺生を行った。 破門だ。地獄道へ落ちろ。」


そうすると仏像から『覚醒者』が抜け落ち、またただの木の仏像となった。

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