予定立て

「大阪…45キロメートルか。 半日くらいかな。」

俺は長い道のりに気が遠くなりそうだったがそれでも一歩を踏み出した。 

京都の街の中心部を離れていくと少しだけ地面にアスファルトが残っていたり、 民家が壊れながらも建っていたりした。


「ところで世界中に『覚醒者』がいるらしいけど俺は世界中歩き回らないといけないのか? はっきり言って不可能だぞ。」


「いや、一番大きな力は東の方…武蔵国に感じる。 そこが全ての『覚醒者』の源だろう。 そもそも行曹ぎょうそうは日本の僧なのだから日本の全ての『覚醒者』を滅ぼせばよいのではないか? もしも仮に、隋?唐?今はなんと呼んでいるのか?に行っていたとして、根幹の日本を解決すればそちらの方も滅ぶに違いない。 いずれ武蔵国に行くのだから、そこで行曹の魂ごと破門させれば間違いない。 まあそのときには世界中とやらから全ての『覚醒者』が襲ってくるであろうがな。」


「今では中国と呼んでいるな。そうか… だから日本の『覚醒者』を滅ぼし、行曹と一人の『覚醒者』のみにして、弱体化させれば強い日本の救援も来ないでしっかりと滅ぼせるんだな。」


「そういうことだ。 だが勘違いするな。我は『覚醒者』、いや行曹に復讐をするためにお前に力を貸している。我は自分のことしか考えていない欲望の塊の人間そのものが嫌いだ。 人間が信じることで我が生まれたが、我はもとより地獄の神。地獄で腐る程たくさんの人間の負の面を見てきた。 天上から伸びる蜘蛛の糸一つにしても、自分だけが助かろうとする。本当に救えない奴らだった。 だから我と馴れ馴れしくしようと思わず、自分の目的を達成するためだけに今を生きろ。 さもなければお前の自我を取り払い、肉体を我のものにするぞ。」


「ああ。」

そうして俺はまた一歩を踏み出した。

今日は1月4日なので川の水は冷たいので壊れかけの鴨川や木曽川を渡るときは水に触れないように慎重に歩いた。

まるまる3時間ほど歩いたところで初めて『覚醒者』を倒した疲れもあり、足がほとんど動かなくなってしまったので近くのドアが壊れた民家の中にお邪魔し、休息を取った。もう夕方になっていたのでベッドに横になるといつの間にか眠ってしまっていた。

とてもとても深い眠りだった。

目を覚ますと、まだあの避難シェルターの中のベッドで寝ているような感覚がして、天井がいつもと違い変な感じがした。

一瞬どこにいるかわからなくなったが、周りを見渡すとだんだん思い出してきた。昨日、一昨日の出来事が夢のように思えていた。 ぼんやりとした目で時計を見るともう昼だった。


「よく寝ていたな。」

鬼神が頭の中で話しかけてきた。

それに俺は少し驚き、そしてすぐに覚醒した。


「さあ行くか。」


俺は顔を洗えないのでさっぱりしなかったが、夜の間に冷えた少し冷たい水と止まらせてもらった民家に備えてあった非常食をありがたく頂戴して、また大阪へと歩き出した。

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