鬼神の力

「我は仏教での恐れられている鬼ではなく、神としての鬼。神は人の信じる力、想像力で何にでもなれる。 さあ小僧、お前の力を想像しろ。」


俺はあの空中にいる『覚醒者』を重力で引きずり下ろすイメージをした。

そうして力を込めると


「地獄へ落ちろ。」


鬼神おにがみが言い、地面に大きな穴が現れ仏像が沈んでいった。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

俺は鬼の金棒をイメージし、手に力を込めると大きな鉄の金棒が手の中に現れた。

何やら『覚醒者』は人々を塵にしていった光線を発しているらしいが、なぜかそれは当たらなかった。


「アマテラスのミカドの加護… お前はまさに天に選ばれしものだったのだな。」


 いつの間にか俺は『覚醒者』の顔まで飛びかかり、ありったけの力を振り絞って金棒を『覚醒者』の目にめがけて振り下ろした。


「ガン、」


鈍い金属となにかがぶつかる音がして、はっと思って『覚醒者』の顔を見るときれいにまぶたのところだけ壊れていた。


「お前は殺生を行った。破門だ。 地獄道へ落ちろ。」


そう仏像の耳元?顔の近くで唱えると仏像は発狂し、『覚醒者』と思われるゆらゆらとした精神体のようなものが抜けていき小さくなって地面に落ちた。

祖も仏像を拾ってみると木でできた人形のような仏像だった。

すっと手にあった金棒は消えていった。


「やっ…たのか、」


「ああ。小僧よくやった。まず一人目だ。」


なんとも言えない感情がこみ上げてきた。


「よっ… よっしゃ〜!」


俺は広大な焼け野原に仏像を握って大の字になって寝転んだ。

そこには不自然なほど晴れ上がった空が見えた。


「一人目…かえっとあと何体日本にいるんだ?え〜っと政令指定都市が…」


俺はカバンからメモ帳を取り出し残りの『覚醒者』を数えた。


「大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市、北九州市、札幌市、川崎市、福岡市、広島市、仙台市、千葉市、さいたま市、静岡市、堺市、新潟市、浜松市、岡山市、相模原市、熊本市… で京都がOKだから…あと19体か… 待ってろよ『覚醒者』」


「よく我の力を使えたな。 物部のやつは無理だったぞ。 この前割の力を使いこなせたのは…神武だな。神武天皇。 あやつは神武東征のときに長髄彦ながすねひこを打つために力を貸してほしいなどといい、見事この力を使ったものだ。 だから彦火火出見ひこほほでみと地獄を表す<火>の文字が入った名で呼ばれていたのだ。 あやつもアマテラスのミカドの子孫だった。やはりお前にはアマテラスのミカドの血が入っているらしい。 小僧。どこの生まれだ?」


「三重県だ。」


「三重? どこの地名だ? 昔の名で言ってもらわなければ…京都、奈良など以外わからん。」


「三重…」

俺は鞄の中から地図を取り出し、三重の地名を調べた。


伊勢国いせのくにらしい。」


「伊勢か。やはりアマテラスのミカドが祀られているところだな。 やはりお前はアマテラスのミカドの子孫。」


「俺が天皇家の一族ってことか?」


「といってもたまたま血が濃いだけであって、天皇家から外れた一族かもしれないがな。 まあ普通の人は気づかん。 さっきあいつの光線を受けても無事でいられたのもアマテラスのミカドの御加護があったからかもしれぬ。」


「まあ詳しいことは俺にはよくわからない。 要するに俺はあの『覚醒者』を倒れるってことだろ? お前の鬼の力と、あとアマテラスのミカド? 天照大神の力を使いこなして。」

 

「そうだ。 次は…西かのう 河内国かわちのくに。」


「それって大阪か。 グズグズしていても仕方ない。 さあ行くか。」

そうして俺達? (鬼神は同化しているからほぼ一人だが)は次の目的地、 大阪へと歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る