『覚醒者』との戦い

「耐えたか。 やはりアマテラスのミカドの子孫。お前には我に力を授けた。 『覚醒者』を滅ぼせ。」


そう言って俺の体の中に鬼神おにがみの声が消えていった。


「はぁ、はぁ、」


体中が酸素を求めている。

体にとてつもない量の熱量が溜まっているみたいだ。

俺は鬼神と同化したこの体を引きずりながら羅生門跡を後にした。


近くにちょうどいい感じにドアが壊れた民家があったのでお邪魔して、ベットで横になった。


朝起きると体は節々が少し痛いもののとても軽くなっていた。

お腹が空いたので申し訳ないが、止まらせてもらった民家を少し漁った。

そうしたら賞味期限が切れそうな缶詰とアルファ米。賞味期限が切れた水があったのでそれで朝食にした。

保存用の水は一応賞味期限切れだとしても半永久的に飲めるらしいからペットボトルはもらっていった。


「力は手に入れた…はず。 まずどこへ行こう。 『覚醒者』を殲滅するぞ。」


「それならば一番近い 眼の前の京都ではないか? 」


冷静になって考えてみて、民家の外を見てみると北の方には大きな大仏が浮いており、羅生門跡の周りはほぼ全ての家が全壊していた。

夜の間はよく見えていなかったが、この悲惨さがとても良くわかった。

家は無惨にも破壊され、ところどころコンクリートの基礎が残ったり、木の柱が立っているだけだ。

周りはだいぶ緑に囲まれており、雑草が茂っていた。

30分くらい歩いて街の中心部に来ると、それは悲惨なものだった。


京都の歴史ある木造建築の町並みはすべて荒野と化し、周りに立っているものはなにもなかった。

ただ異様に仏像がただ浮いていた。


「『覚醒者』… 母さんの敵!」

俺は我を忘れて『覚醒者』の能力の範囲まで到達しそうになった。


「待て。 小僧、我と同化した身だ。そうやすやすと死ぬのではない。」


頭のなかに鬼神の声が響き、俺は我に返った。


「じゃあどうすればいいんだ。」


「我だって封印されてから1000年。何もしていなかったわけではない。あいつらは自分自身で考えることのできないただの力の塊だ。極楽浄土?そんなものは存在しない。黄泉の国があるだけだ。」


「でもそれじゃあ」


「そう。我は地獄の神。 地獄なんてないのだ。 ただ前世の行いが悪い人が黄泉の国へ行くと地獄へ落ちるなどと戒めて、悪い行いを減らそうとしたのだ。 そうしてできた人々の感情、信念の塊が我々、神だ。我々神は人々の心の頼りとなっている。だからこの大和の国の神はたくさんいるのだ。 仏教は好かんが別に取り入れて良い。 だが、確かな根拠や意思もなく、極楽浄土なんぞというところへ人ぎとを送るなどという蛮行は許すまい。 『覚醒者』を倒すには極楽浄土など存在しないという現実を見せてやるのが一番なのだ。」


「結局どうすればいいんだ?」


「まあそう焦るでない。仏教は殺生を禁じている。 でもあやつらはそれを行ってしまっている。 だから破門させるのだ。 そうしたら仏教の力を得られなくなり、仏像から『覚醒者』の魂が抜け、無力化し消滅させることができる。 だから我の、鬼神の力を使ってあの閉じている仏像の目を開かせるのだ。」


「鬼神の力…」


「そうだ。同化している身なら使えるはずだ。」


「まあ覚悟は決まっている。 ぶっつけ本番と行きますか。」

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