鬼神

俺はついに鬼神おにがみの封印を解き放った。

不思議と恐怖はなかった。

鬼神らしきものは身長が約3メートルくらいのガタイの良い筋骨隆々の赤い中年男性のような姿をしていた。

「鬼…神?」


「フハハハ!! 道長め。ようやく封印を解いてやってぞ! あん? 人間の匂いがするぞ。 お前か。」


「鬼神か?」


「ああ、我は地獄の神。 閻魔大王様より力を与えられしもの。

そういう小僧。お前の名はなんという。」


火神徹ひがみとおるだ。」


「火神か。ふむふむなるほど。 お前はあの忌々しい道長の子孫だな。 といっても血はとても薄いが。 いやアマテラスのミカドの子孫でもあるのか。 興味深い。 で、お前は何をしにここへ来た。」


「『覚醒者』を殺すためにお前の力を借りに来た。」


「はぁ? この我の力を借りに?だと。 よくそんなことを言えるな。 この俺の力をか? この前力を貸したのは… そうかもう1000年になるのか。… 物部氏だな。 あいつはしっかりと仏教徒戦ってくれた。 まあ厩戸皇子の力が強すぎたからな。 あれは相手が悪かった。 まあその後に我らを負かした蘇我氏を中大兄皇子と中臣鎌足が殺してくれるんだが、この中臣鎌足があの忌々しい道長の祖先だとはな… まあお前にはこの我の力は制御できない。 それに人間は嫌いだ。 」


ただ独り言のように話しているだけなのに圧迫感が強い。


「あれ? 小僧。 『覚醒者』といったか?」


「ああ。今この地球は『覚醒者』によって滅ぼされかけている。

お母さんも殺された。 その敵を討ちたいんだ。」


「『覚醒者』…この俺様を封印まで追いやった極楽浄土を作った『覚醒者』… 行曹… 地獄まで許すまい。 道長のことがあってから人間と関わるのはゴメンだと思っていたが、そうではないらしい。 小僧。力がほしいか。」


「ほしい。」


「死ぬ覚悟はあるか。」


「死ぬ覚悟はとっくのとうにしている。 俺はお母さんの敵を取るためだけに今生きている。」


「ならば我を体に取り入れてみよ。 幸いお前にはアマテラスのミカドの血がいくらか入っているようだ。 我の力を制御できるのは我の他に閻魔大王か、アマテラスのミカドしかおらぬ。 どうするか。 小僧。 地獄の神。我、鬼神と同化するか。」


「ああ。もちろんする。」


「自分の感情がこもってないな。 まあ。我も肉体の拠り所が合ったほうが良い。

力を制御してみよ。」


そう言うと鬼神は何やら某アニメの魔法のランプの精のように精神体と化し、俺のからだの中に入っていった。

そうすると俺の血が煮えたぎるような感覚がした。

俺が天照大御神の子孫だって? でも1000年経っているから日本人のほとんどの血に天照大神の血が入ってるのではないか…まあそんなことはどうでもいい。

しばらく、激痛に侵された後、頭の中で声が響いた。



「鬼神、今まさに天岩戸を開く。」





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