告白
学校の敷地内で一台の通学用自転車を押しながら談笑する男女二人の姿があった。
「あのさ、前々から思ってたんだけどさ」
「なぁに?」
「俺と春花って、かなり相性良いと思うんだけど」
「うん、私もずっとそう思ってるよ」
「そろそろ付き合っても良いんじゃないかなって」
「そうだよね……」
「あまりその気はない感じ?」
「違うの……私も付き合いたいって思ってるよ……」
「じゃあ、付き合っちゃう?」
「ごめん……」
「え?」
自転車を押す足が止まり、二人の間に短い沈黙が流れた。
「俺もしかして……今フラれた……?」
「違うよ……そうじゃない……」
「どういう事?」
「実はね……今さ……おばあちゃんの身体の具合がよくないの……医者からはもう先が長くないって……」
「そうだったんだ……気付けなくてごめん……」
「ううん、大丈夫。私ね、おばあちゃん子だったからさ、デートしててもふとした瞬間におばあちゃんの事が頭を過ぎるの。おばあちゃん大丈夫かなって、頭とか身体とか痛くなってないかなって」
「それはしょうがないよ、さすがに心配になる」
「だから私達が付き合うのは……おばあちゃんの事が落ち着いてからでも良いかな……?」
「もちろん待つよ、おばあちゃんの具合よくなると良いね」
「嬉しい、ありがとう」
「今週の日曜日って空いてる?」
「日曜日は家族みんなでおばあちゃんのお見舞いに行くの」
「そうなんだ、分かった」
「ごめんね」
「大丈夫、気にしないで」
再び歩み始めた所で自転車を押す足取りがまたもや止まった。
「急に立ち止まってどうしたの?」
「あっ……いや……何でもないよ……」
「何かあった? 家で飼ってる猫みたいに誰もいない場所をじっと見つめてたから」
「煙草が無くなったから、そろそろ買わなきゃなと思って」
「煙草? 学校にそんなもの持ってきちゃダメじゃん、先生に見つかったらやばいよ?」
「そうだね……見つからないように気を付けるよ……」
二人は学校の敷地内から出ると少しの距離を歩き、教師の目が届かない場所から自転車の二人乗りをして家路を辿った。
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