一条家
陰陽界に存在する名門家。
栄枯盛衰。
長い歴史の中で多くの家が興り、没落もしていく中で、平安の時より名家中の名家として永遠と君臨し続けているまさに真の名家。
それこそが僕の生家である一条家だ。
現在も、自分の存在でごたついているところがあるが、それでも保有している戦力も、影響力もトップクラスである。
「……久しぶりに来たな」
陰陽師たちが暮らす宮廷陰陽殿。
その中心地からは離れた郊外。
そこに建てられた巨大な和風建築こそが一条家の本殿たる屋敷である。
「……はぁー」
一条家の屋敷の前に立った僕は憂鬱さを隠そうともせずに深々とため息を吐く……マジで嫌なのだが。
「面倒事は出来るだけ勘弁したいのだが」
母親がいたときならばいざ知らず、亡くなってしまった後に父親と顔を合わせた際の記憶で良いものなんて一つたりとて存在しない。
基本的には面倒事だ。
「だけどぉ……行くしかないよなぁ」
それでも、ここまで来ておめおめと引き下がることなど出来はしない。
「……邪魔するよ」
その場で幾つか深呼吸をした後、僕はようやくになっての屋敷へと入る扉の方へと手を伸ばす。
「……」
そして、僕が扉に触れた瞬間。
自分の体へと普通の人間であれば一瞬で炭へと変えてしまうような高電圧の電流が一気に流れてくる。
「よっと」
それを受け、ちょっとだけ体を震わせる僕は電流を浴びる中でも、強引に扉を開けていく。
「……いつも、これにはびっくりするんだよなぁ。もうちょっと弱くならないだろうか?」
あの雷はこの家にある防衛装置だ。
うちの一族のものであれば、防衛装置は作動せずにすんなりと扉を開けられるのだが、そもそもとして一族であるかどうかの判定に呪力を用いているために、それがない僕は毎回部外者として攻撃を食らっているのだ。
まぁ、そこまでのダメージもないから別にいいけどね?
「有馬にぃっ!」
そんなことを考えながら屋敷の中へと入ってきた僕へと、勢いよく一人の女の子が自分の方へと突撃してきたのだった。
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