呼び出し

 贈り物を片した後も後で大変だった。

 物を仕舞う場所がないわ、めちゃくちゃ物が被るは……頭の痛いことしかなかったと言える。


「……ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ」


 そして、更に大きな問題はこの後だ。

 贈り物を片付け終わった段階で陰陽界の対立に対して、全力で周りが僕を巻き込もうとしていたのだ。


「……クソうぜぇ」


 自分との面会を求めてきたものは数多くいる。

 うちの学校の生徒会長。

 小さな分家の若当主。

 若者たちが集まって出来た過激派の親玉。

 当主の座がどうしても欲しい連中。

 自分の方に命運をベットしてきた小さな陰陽師家の当主たち。


「しかも……うちの父親が僕を呼びつけているんだよなぁ」


 そして、その極めつけは僕の元に届いている父親からの書簡である。

 その書簡には僕の生家へと顔を見せるようにとのお達しが書かれていた。


「面倒事にしかならない」


 これはもう確実に、断言できる。

 最初から最後まで厄介ごとでたっぷりとなっているだろうと。


「……はぁー」


 僕は深々とため息を吐く。

 これはもうため息を吐くことしかできないでしょ。

 本当に面倒。


「行きたくないならいかなきゃいけないんじゃない?」


 父親から送られてきた書簡を手に、自分の家のソファで項垂れている僕へとキッチンの方でせっせとコーヒーを淹れている神楽が声をかけてくる。


「そういうわけにもいかん。僕はまだ母親の墓参りはしたいからな」


 僕に確かな愛を持ってくれていた母の墓所を管理しているのはうちの生家の方だ。

 自分が母の墓前に手を合わせようと思ったら、生家の方からの許可が必要となり……この権利だけは今まで認めてもらっていたが、ここで呼び出しを拒否したりしたらその権利を否定されかねない。


「……あー。それは、ご愁傷さまかも」


「でしょ?」


 母の墓という最高の手札を持っている向こうには僕とてさほど大きく出ることも出来ない。

 実家に帰るくらいのことは我慢できる。


「ところでコーヒー淹れたけど飲む?」


「あっ、もらうわ」


 色々と頭を抱える僕は、それでも神楽の淹れてくれたコーヒーを飲んで一息つくのだった。

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