嫉妬
用があるからなどと言って僕の家から去っていた早紀。
そんな彼女が自分の家の元へと戻ってくるのは本当に早く、30分近く経った後だった。
「……何しに行っていたん?」
30分経って戻ってきた後、当然のように片付けへと参加しにきた早紀へと僕は疑問の声を投げかける。
「何でもないよ」
だが、それに対して早紀は何も答えずに淡々と仕分けを続けている。
「これは食器棚の方でいいよね?」
「あぁ、いいよ。多分、使うこともほとんどないだろうから。別に洗ったりしなくてそのまま突っ込んでていいよ。別に場所自体はまだまだあるはずだから」
「わかった」
早紀の言葉に僕は淡々と答えていく。
「……いや、で。何をしに言っていたのよ」
「気にしなくていい、別に」
「……そう?」
何をしに行ったのかは気になるのだが……何か、うちの家に変なものを持ち込まれたりしていたら嫌なのだけど。
「指輪」
そんなことを僕が思っていた中、自分の隣にいた神楽がぼそりを一つの単語をつぶやく。
「……んんっ」
「んっ?」
その言葉を受け、反射的に僕が神楽の手に視線を送ってみれば、彼女の手には。彼女の右の薬指には銀色の指輪が光り輝いていた。
早紀の手に嵌められている指輪の位置はちょうど自分のものと同じだった。
「……あ~」
それを見て、僕は早紀が何をしたかったのかを理解する。
「……」
要は嫉妬か。
僕と神楽が二人して同じ指輪をつけていたことへの。
だからこそ、自分も同じであることを証明するために指輪を買ってきたのであろう……そういえば、僕はちょくちょく早紀から告白もされているからな。
実に妥当なところだと言えるだろう。
「まぁ、別に勝手にしていれば。そんな興味もないわ」
僕は人から見下されるのが嫌いなんだ。
早紀の上の視点から好意に自分が振り向くことはない。
「……うぅ」
僕の言葉を受け、早紀が無表情のままにショック受けたような表情を浮かべているが、それをさらりと無視する。
「さっさと片すか」
特に重要なことじゃないことがわかった。
それに安心した僕は贈り物の片づけを再開するのだった。
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