指輪
「あわわ……」
僕が読み終わると共に投げ捨てた手紙を慌てて拾い上げ、それをもったままあわあわしている神楽をよそに、僕は一緒に同封されていたプレゼント用の箱を上げていく。
「いや、露骨すぎやろ」
中に入っていたのは二つの指輪であった……いや、本当に露骨すぎる。
指輪を入れてくるなんてことある?
結婚しろ、っていう圧でこれ以上のものはないでしょ。
「……結構いいやつじゃね?これ」
二つのうち、一つの指輪をとった僕はその質を見てちょっと引きながら声をあげる。
もうこれをそのまま婚約指輪としてしまっても問題ないような代物であった。
「神楽」
「ふぇ?」
「指輪」
「んなっ!?」
僕はもう一つの指輪を箱からとってそれを神楽にあげる。
「うん、めっちゃぴったり」
僕は右手の薬指に指輪を嵌めてそのサイズのピッタリ感に再度、引く。
「……うぅん」
そんな僕の横で、さらりと神楽は左手の薬指につける……結構、神楽はまんざらでもないんだな。
んじゃあ、普通にこのまま結婚しちゃうのもありかもね。
どうせ、今ももう同棲している状態なんだし。
まぁ……そこら辺を考えるのはもうちょっと後でいいかもだけど。
「いやぁー、にしてもすごいよね。露骨すぎる……一番、すり寄り方が露骨だったわ」
ここまできれいに自分たちが送り込んできた神楽を有効活用してくるとは……と思うし、阿野家はもう一族全体で自分を取り込みに来ているんだね。
他の贈り物はあくまで家として送ってくるのではなく、個人として送ってきているものがほとんどであり、家としてはまだ一枚岩になっていないことがよくわかる内容だったのだが……阿野家はもうわかりやすいくらい全力で家全体として僕を取り込みに来ているようだ。
「……まぁ、良い種馬にもなるだろうしな、僕は」
「……種っ!?」
これでも名門中の名門生まれ。
血だけでもかなりの価値があるだろうね、僕には。
阿野家の方針に対して理解を示した僕は、もうすぐにそこから意識を外して別の贈り物の整理をしていくのだった。
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