勢力図

 帰ろうとした僕を呼び止める陰陽頭。


「まだ何かあるの?」


 そんな彼女へと僕は不満露わにする。


「私たち陰陽師はたかが日本政府如きに屈するほど軟弱では無いか、日本政府とも友好な関係を維持しているのよ」


「まぁ、そうだね」


「だからこそ、完全に彼らの存在を無視することも出来ないのよ……」


 一応日本政府の管轄だからね、陰陽師は。

 日本政府が中々勝てない財務省のレベルを999にしたのが陰陽寮なだけで、形式上はこちらが下なのだ。


「それに、私たちの最大の相手は内部よ。陰陽師全体の方針として、一般層にも認知を広げ、友好関係を築くつもりでいた。それを貴方はご破算にしたのよ」


「そこら辺はよろしく」


 陰陽師全体の問題であれば目の前にいる怪物が何とかしてくれる。

 文字通り千年の頂点。

 今もご意見番として権力の座に居座る長老格が赤ん坊の頃から陰陽師の頂点にいるのが陰陽頭なのである。

 権力闘争で負けるはずもないだろう。

 政治能力も高いしな。


「……私にだって限界があるわ。今回の件を鎮めるのは私でも難しそうなのよ。主に貴方のせいで」


「ん?」


「対立が起きているのよ、親有馬派と反有馬派で。陰陽師最強である早希と仲が良く、なおかつ本人の実力もあった有馬を、中傷し続けることに反対する勢力が出来たのよ」


「おん?」


「結構深刻な対立でね……反有馬派が貴方の父を筆頭とする上の世代だとするなら、親の方は若い世代なのよ。しかも、早希を中心とするね」


「あっ……」


「そして、上の世代の中でも、反の筆頭格は基本的に各家の当主たちなのよ……親の方に自分が当主になろうとする上の世代が合流し始めていて……もう本当に地獄な状況になっているのよ」


「なるほど……なるほどねぇ?」


 僕をどうするかの対立がそっくりそのまま世代間格差となり、権力闘争にまで発展したってことか。

 陰陽頭の言っていることをそのまま当てはめた僕の勢力図予想に従うと……当主連中であっても結構キツイ状況になっているんじゃないか?

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