収入

 陽校での生活は概ね良好。

 基本的に早紀と一緒というのが苛立ちを助長させるが、それでも彼女との日々はしっかりと僕の成長を実感させてくれる。

 そんな中で、僕の私生活がどうなっていたかというと、実は結構ヤバいことになっていた。

 というのも、実は僕の収入源が大変なことになってしまっており、割と家計は火の車となっていたのだ。

 ちょっとばかり日本政府……というか、もっと上。国際連合の方から正式にすべての大国政府から配信を一時停止するように求められてしまっており、そのせいで僕の収入源である配信での収入は完全に断たれた。

 なおかつ、日本政府がくれていたダンジョンを潜ったことへの報奨金も一時的停止されてしまっており、本当に収入源がないような状況となっていた。


「いやぁー、ようやく配信が解禁されたよ」


 だが、そんな状況もようやく解放され、僕は配信活動の再開の許可が下りた。

 既にもうだいぶ多くの情報が解禁されており、僕が自由に話してもある程度大丈夫という判断になったのだろう。


「おっ、良かったね」


 そんな僕の言葉を聞き、自分の隣にいた神楽が声を上げる。


「いやぁー、ちゃんと貯金とかはしておかなきゃだめだね」


 本当に良かった。

 うちにはほとんど貯金もなかったから、割と焦った。


「……有馬は謎の正義感を出し過ぎなのよ。慈善事業にお金を出し過ぎだわ」


「僕がどうせ余らせても仕方ないであろう?余ったものを下のために使うのは当然だろう?」


「ナチュラルに他人は下なんだね」


「当然だ、僕だぞ?」


「うわぁー……もう生まれながらに有馬の精神は高貴な国王か何かなの?」


「ふっ」


 そりゃ、僕なんだからその通りだろう。


「配信以外にもこれまで政府からもらっていたダンジョン関連の報奨金は陰陽頭の方から出ることに決まったし、これでもうお金に困ることはなくなったね」


「それはよかったね」

 

 いやぁー、本当に良かった。

 目の上のたんこぶ的な問題であった金銭問題について片付いた僕は実に満ち足りた気持ちとなっていた。


「ただいま」


 そんな僕の気持ちは、さも当然のようにこちらの家へと上がってきた早紀を前にして消し飛ぶ。


「殺すぞ、ごらぁっ!!!何がただいまだ!?ここはてめぇーの家じゃねぇよっ!」


 そして、そのまま早紀に対して怒りの声を向けるのだった。



 

「……なぁーんで、ちょっとズレたところはあるけど慈善精神にも旺盛で概ね善人である彼はこと早紀ちゃんに関すると殺意の化け物になるのかしら?」



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