訓練
授業中、勝手に始めた僕と早紀の二人の訓練。
「はぁ……はぁ……はぁ……ねぇ、君ってばどうなっているの?もう少し体の癖とか、呼吸法とか盗めるかな?とか思ったけど、何か人間に出来る挙動じゃないと思うんだけど」
そんな中で、息を切らしている早紀が不満げに声を上げる。
まぁ、僕の体の構造はかなり特殊だからな。
常人よりも筋肉密度が百倍だったり、ありとあらゆる臓器の機能が常人の百倍だったり、病院で軽い検査をすればすべて異常値となるのが僕だ。
同じ人間だと思って自分から何かを盗もうとしても上手くいくはずがない。
「そうか?僕にとっては有益だぞ」
自分を模倣しようとして失敗している早紀の前で僕は不敵な笑みを向ける。
僕の成長曲線はかなり特殊だ。
ただ体を鍛えれば、確かに僕の身体能力はしっかりと上昇を見せてくれる。
そこに限界値などない。
だが、今更、僕の体が少し強くなったところで割と焼け石に水であり……それよりも重要なのが新しい感覚を掴むこと、というずいぶんと抽象的でふわっとしたものとなる。
例えるなら……怪魔の王との戦いで身に着けた光速へと届く突きであったり。
僕は唐突に新しい感覚を掴むことが多々あり、それによって手札を増やしていくのだ。
「良い感覚を与えてくれる」
悔しいことに、自分の格上だと言わざるを得ない早紀との訓練で新しく掴める感覚というのも多く、自分の成長にかなり寄与してくれると言える。
「……むぅ、私だけ手札晒していない?」
「いや、僕だってちゃんと手札を晒しているでしょ」
「……有馬、色々と工夫は重ねていても結局は拳で殴るってだけだからあまり手札を知っていてもどうしようもないのだけど。というか、むしろ有馬の拳から出てくるであろう球数の多さを前に悩みが生じてむしろ守りにくくなる」
「へっ」
むしろ、それが狙いだからね。
切り札なんて早紀を前に持っていてもしょうがない。
たった一発うまく行ったところで勝てるなんてしょうもない考えをしていてもダメ……自力で圧倒出来るようにならなきゃ。
完膚なきまでの勝利を僕は掴むのだ。
「うし、それじゃあ、続けよっ」
「わかった。私としても有馬が強くなってくれるのは嬉しい」
僕の言葉に対して、ずいぶんと早紀は舐め腐ったことを返してくる……まぁ、ひとまずは不満を飲み込んでやろうじゃないか。
「それじゃあ、またその場から動かない形での戦いをやっていこうか」
「そうね」
僕と早紀は二人で授業の中、勝手に二人だけで高めあっていくのだった。
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