戦後
自分が意識を失っていたのはどれくらいだっただろうか?
「……クソが」
いや、そんなことはもうどうでもいいか。
僕はさっき、忌々しい早紀を相手にまた負けたのだ……次元斬をあそこまで広範囲にバラ撒けるのは反則だろ。初めて見たぞ、あれ。
駄目だな、早紀に出来ないことなんて何もないと思っていないと。
「……やっぱ、気絶から回復する時間早い」
「うるせぇ、僕が負けているだろうが……はぁ、本当に、ね」
僕は早紀の言葉に忌々しさを返しながらゆっくりと立ち上がる。
「はぁー」
そして、そのまま深々とため息を吐く。
「……ちっ」
僕は早紀のことを無視して模擬戦室の中央から立ち去っていく。
「……お、お疲れさま?良い戦いだったね。見ていて感動したよ」
そして、自分たちの戦いを観察していた他のクラスメートたちのところにまでやってきた僕へとまず、佐藤さんが声をかけてくる。
「うん、ありがとう」
そんな佐藤さんへと僕は簡潔に答える。
「……嘘でしょう?観勒さんに、傷を負わせられる人が?」
「あ、あれで呪力がないというのか?そ、そんなことがあるというのか?……いや、嘘だろ」
「何か、えっ?……いや、本当に、えっ?……こ、これまでの私たちはあの子をずっと己の格下として扱っていたというの?そんなの恥ずかしいなんてレベルの話じゃ」
「こ、ここまでの強さだというのか……?」
「ここまで来たらもういっそ清々しいな……いやぁ、実に見ごたえのある試合だった。あれが俺の参考になるとは思えないが、拳ひとつであそこまでのことが出来るとは、新しい世界を見ることが出来たよ」
そんな僕と佐藤さんの周りでは、自分たちの戦いを見て周りのクラスメートたちが口々に驚愕の声を上げていた。
……この反応が僕の強さにおける評価と、早紀の強さにおける評価なのだ。
自分の評価は良いとして……早紀はここまで評価されているのだ、本当に忌々しい。
負けているのに驚かれているというね。
「……先生」
そんな周りの評価の中で、クラスメートたちと同じように呆然としていた担任の先生へと僕は声をかける。
「えっ、あっ、うん。何だ?」
「ちょっと気分にすぐれないので帰らせてもらいます……最後の最後で嫌なものだって見させられたので」
「あぁ、相分かった。あそこまでの試合をした後だ。それくらい構わない。しっかりと休んでくれ」
「はい、それでは失礼します」
僕の言葉に担任の先生が頷いたことを確認した後、自分の家に向かって帰宅するのだった。
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