模擬戦③
早紀の術式の出力上昇。
それによって何が出来るようになるか?それは、ただただ理不尽性能が向上するのである。
最初の頃はあくまで物質の生成。
この世界に存在しないものを含めて、ありとあらゆる物質を作り出すという効力なのだが、術式を上げることにより、それが概念の生成にまで進化するのである。
それによって何が出来るようになるのか?
「次元斬」
それは簡単。
次元ごと斬る、なんていうよくわからないバグ技めいたことが出来るようになったりするのだ……うん、理不尽っ!
「……っ」
僕はそんな理不尽を前にしても決して心を折ることなく己を奮い立たせ、早紀と相対していく。
当たれば確実に死ぬ。
そんな攻撃を僕はすべて回避しながら早紀との距離をどんどん詰めていく。
次元を斬るなんて大技も当たらなければ意味ないし、見えなくとも要領さえつかめば逃げることだって訳ない。
「……それは、だめでしょっ」
そんな僕であっても全方位に、大量に、波状的に出現する次元斬を前にすれば足を止めざる得ない。
僕は回避不可能な攻撃を、足腰に力を入れてしっかりと腰をひねって何もないところを全力で殴ることで、この世界の壁とかいうよくわからないところに影響を与え、次元斬による効力を出来る限り抑えてみせる。
「……ぁ?」
だが、僕がそんな悠長なことをしている間にも。
「王手」
術式によって転移装置を作り出していた早紀が僕との距離を完全に詰めてしまっていた。
「……まずっ」
「私のことだけを考えさせてあげる」
僕が慌てて早紀から離れようとしても無駄だった。
早紀は、己が触れた生命の内部に新しいものを作り、挿入することが出来るのだ……触れられているだけでも普通に死ねてしまうのだけどぉ。
「……ッ!」
一瞬で自分の脳みその中にただただ早紀の顔の情報だけが一気に流れ込んでくる。
その情報量は尋常じゃなく、これっぽちも内容のないその光景を、僕は人間百年生きたときの生涯で得られる情報の総量ぶん突っ込まれる。
「……ぐぁ」
それを僕の脳みそは受け入れることが出来ず、そのままオーバーフローして気絶してしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます