模擬戦②

 宙の方にぷかぷかと浮かび始めた早紀。

 彼女がそこから降り注がせるのはずいぶんと過激で物騒なものであった。

 剣に、槍に、斧に、ありとあらゆる武器を早紀は作り出してこちらへと打ち出してきていた。


「ふんっ」


 それらをすべて回避していきながら、僕は思いっきり足を振り下ろす。

 狙うのは陰陽頭によって作られ、密かに今も早紀の手によって強度が補強されているこの模擬戦室の床そのもの。


「らぁっ!」


 僕はそんな床を蹴り一つで破壊。

 大きくヒビが入って破裂した床から湧き上がってくる大量の床の破片、それらへと僕は迷いなく足を振るい、そのすべてを弾丸のように早紀へと打ち出していく。


「……あら」


 それらのほとんどが早紀の作り出した炎の壁を通って燃え尽きるのだが、僕が強めに蹴った一部だけは燃え尽きずに彼女へと向かっていく。

 それらの破片は早々に再展開されていた早紀の結界を再度、破壊してみせた。


「しっ!」


 これで邪魔な壁はなくなった。

 一瞬にして早紀よりも更に上空へと飛びあがった僕はそのまま両腕を固めて彼女へと振り下ろす。


「……っ」


 僕の両腕を早紀が片手をあげて何とか受けてはみせるものの、それでも衝撃をすべて殺すなんてことは出来ずにそのまま床へと吹き飛ばされていく。

 だが、一瞬だけ早紀と触れ合った瞬間に彼女から黒い炎をプレゼントされ、自分の上半身を一瞬で燃やされる。


「……最悪、制服は買いなおしだよ」


 その炎を一瞬にして身震いでかき消した僕だが、それでも自分の制服は一瞬で灰も残さず消えてしまった。

 あの黒い炎の温度は太陽に匹敵するどころか超える。

 ただの衣類が耐えられるはずない。

 あんなの、僕だって一分も燃やされたままでいれば火傷してしまうだろう。


「こっちは完全に腕が折れた」


 眉をひそめながら地面へと着地した僕の前で、早紀は自分の攻撃を受けて完全に骨が折れてしまっていた片腕を持ち上げながら答える。


「よし」


 そんな早紀は一切迷うことなくその折れた腕を自分で引きちぎり、その代わりに自身の新しい腕を己の術式で生み出してみせる。

 これでさっきまでの骨が折れていたという事実はなくなったわけだ。


「……想像を絶するような再生方法だな。まったく」


 だが、そんな早紀の再生方法はいつ見てもキモイ。

 なんか生物として受け入れがたい方法だ。


「よし……出力を上げていく」


 そんなことを思う僕の前で、そんなことは一切気にしない早紀が己の術式の出力を更に一段、引き上げていくのだった。

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