カタツムリ

 陰陽専修学校。

 通常、陽校。

 そのうちの一つのクラス。

 早紀も在籍している陰校の中で最もレベルの高いクラスへと僕並びに佐藤さんは配属されることになっていた。


「……」


 自分が配属されたクラス。

 そこには僕も見たことのある連中でたっぷりだった……名門出身の奴らばっかりだ。

 確か、ここの下級生には僕の妹も通っていたはず。

 知り合い連中と一緒に授業受けるの面倒なこととなりそうだなぁー、連中は露骨に僕を見下している連中が多いから。


「道端を一生懸命カタツムリが進んでいたんだよね。可愛かった。のろのろのろのろゆっくりと……いつまでも見ていられる」


 ……僕への当てつけか何か?

 僕は自分の隣を陣取って永遠と訳の分からぬ話をしている早紀に若干イラつきながらも無視を決め込む。

 はぁー、誰がのろのろゆっくり成長していくカタツムリだよ、ぼけぇ。

 いや、早紀にはそんなつもりないだろうけど。


「それでね?私はずっとカタツムリを見ていたんだけど……その前にちょっと死にそうになっちゃってて。それで助けてあげたはいいんだけど、その後。私の力にし触発されたカタツムリが強化されちゃって……」


 本当に僕への当てつけじゃないのか?これ。

 僕はカタツムリでもないし、助けを借りずとも早紀を超えてみせる。


「あれ?聞いている?」


「……」


「……聞こえて、ない?」


「……」


  僕が早紀の話を露骨に無視していた頃。


「観勒さんが誰かに話しかけているの初めて見たかも」


 僕と早紀の元に、黒髪お下げで眼鏡をかけているThe・委員長みたいな見た目をしているひとりの少女が近づいてくる。


「そうなの?僕は結構、早紀が話しているイメージあるけど」


「クラスじゃこれっぽちも話さないわ。クラスの委員長としてちょっと心配だったの」


 ちゃんと委員長だった。


「だってほら、クラスのみんなは勝手に話している。それを私は聞ける。でも、有馬は私に話しかけてくれないから……私が、喋らないと」


「あら?それじゃあ、悪いのは有馬くん、なのかしら?」


「……勘弁して欲しいんだけど」


 なんか自分が悪者みたいな雰囲気になりだした中で、僕は肩を竦めながら口を開くのだった。

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